Zillo'll
□夜中のデート。
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…
……
全く勝てない。
やる気の割りには空回っていた。
全く当たりがこない。
いや、くる前に誰かが上がってしまうのだ。
彼女はそんな俺の持ち札をじぃっと眺めている。
たまにその横顔を盗み見ながら、情けない自分のカードを見る。
「ねぇ、これって…何?」
彼女は俺の耳元に顔を近づけて小声で話した。
手持ちのカード、一枚を指差した。
「これ?」
「これは動かせないの??」
彼女は時々くだけた言い方で話してくる。
それは年相応のようで、幼いようで可愛い。
「いや、これは動かせるけど…」
彼女に説明しようとして、気がついた。
このカードは動かせる。
これで劣勢を直せるかもしれない。
彼女を一瞥して、そのカードを出す。
今までの劣勢をいきなり覆させられるほどではなかったが、これは機転になった。
その後、彼女の他愛もない…ように見えるヒントのおかげで勝ちに勝った。
「こんなに勝つのは初めてだ」
「そうですか。」
彼女は笑う。
「良かったですね」
「アンタ、本当に幸運の女神だったんだなぁ」
苦笑。
でも彼女はうつ向いた。
「冗談にしても褒めすぎです」
彼女は顔を赤くしながら、今度はそっぽを向いた。
酒場を出たのは結局朝方。
朝陽で空が明るくなりかけの頃だった。