Zillo'll
□破滅の中で恋をした。
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英雄と誰もが私を呼ぶ
違うと叫びたかった
世界を救おうとしていた
皆を救おうとしていた
そんなのじゃない
私は、私が生きるために必死だっただけで。
仲間を助けるのに必死だっただけで。
この大陸を救うためには何もしていない。
勘違いなんだ。
その日は猫屋敷に皆が揃った。
皆、各地で闇の巨人と戦い、魔物の群生を止めていたらしい。
そんな勇者達を猫屋敷の階段に腰かけて眺める。
輝いて見えた。
平和を心から笑い合う声で満ち足りていた。
「……」
言い表せない感情が身体を支配しようとしている。
サレスは自分の身体を強く抱き締めた。
そうしないと身体から自分が追い出されるような、放れるような気がした。
「どうかしたのか?」
不意をつかれ、飛んでいた意識を急いで集めながら微笑む。
長くて綺麗に結い上げられた金髪が目に入る。
視線を少し上げると、不安そうにサレスを見るレムオンの顔が見えた。
<冷血の貴公子>
その通り名からはあまりにもかけ離れた彼の顔。
しかし、人一倍仲間思いの彼のその顔は、通り名が所詮は『通り名』だと悟らせるのに十分だった。
「うん…」
抱き締めていた身体を放し、確かめるように頷く。
「大丈夫です。ただなんだか寒いなぁって思いまして」
「寒い?そうか?」
彼は眉を軽くひそめ、片手を顎の下に当てて何かを考え出した。
「悪寒でもしたのかもしれませんね。先程、レーグがこちらを見てましたから」
サレスは軽く笑う。
咄嗟の嘘だったが、レーグには悪い事をしたと少し反省した。
レムオンはレーグを一瞥したからだ。
「そうか…。なら良いが、主役が隅でいるなんて誰も許さないぞ」
「そうですね」
サレスは勢いよく立ち上がり、そのままの勢いで小さくジャンプした。
「では、オルファウスが用意してくれた豪華な料理でも食べに行きます♪」
立ち上がった後に意識的にレムオンを見ないように真っ直ぐ前を向いた。
腕を捕まえようと上がり始めるする彼の手を気付かれないように滑らかに避けて、彼を見る。
「そんな事していると、ティナ姉ぇ様が離れていきますよ」
ゆるやかに微笑み、さっきからこちらを気にしている赤髪の女性の名を口にする。