Zillo'll
□夜中のデート。
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女より長い銀色の髪
絶望しきった暗い瞳
彼は俺に呪いをかけた。
「…やめた!」
「え?」
彼女がのぞきこむ。
「何をやめるんです?」
俺は座っている彼女を見る。
彼女も俺を見てたから必然的に目が合い、彼女は微笑んだ。
「ここにずっといるのを、だよ」
「何、それ…?」
いぶかしげに彼女は眉をひそめた。その顔でも多少整った彼女の顔は、綺麗に見えた。
━…やべぇ、ひいき目か?
「やることなんて、1つぐらいだろ」
俺はまだ理解してない彼女に笑いかける。
「デートだよ。デート」
その単語を聞いた瞬間、彼女は視線を無理矢理逸らすように下を向いた。
でも、その一瞬に彼女の顔が赤くなったのを見逃さなかった。
勘の鋭い彼女は大陸一の冒険者として名を馳せていたが、どうやら色恋にはウトいと見えた。
…まぁ、ウトくなければ今ごろ仲間かロストールかディンガルか、はたまたリベルダムか…。
彼女が自分の元にこうして無防備に来ることはないだろう。
彼女を慕うものも好意を抱くものも少なくない。
むしろ多いだろう。
そして、自分では到底届かない身分のヤツが彼女に好意を持っているのだ。
そう、あの大神官様も……
急に現実味をおびた痛みが身体を駆け巡る。それと共に居心地の悪い嫉妬が込み上げてきた。
そう、彼女があの大神官様と顔なじみなのに、実は気づいていた。
彼女は彼女で、気を使っているのか何も言わない。俺がヤツに出会わないのも彼女のおかげというのが少なからずある。
「ほら、立てよ。行くぞ」
彼女は顔を赤くしながらも差しのべた手をしっかりと握り返した。