第四章

□Vol.12 不器用な努力
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「は、はじめまして那須さま!!」

媚売り上手ナンバーワンの将文が、間髪入れずに与一さんに頭を下げる。

あっこのやろおおお!
自分だけ抜け駆けして気に入られようって作戦ですかこのやろおおお!!


出遅れまい!!と慌てて私も頭を下げようとしたけれど、
それより早く、与一さんが言った



「あぁ、堅苦しいのは嫌いなので与一、でいいです」

「えぇ!?でも・・っ」


わざわざ那須からやってきた弓の先生を呼び捨てって・・!!
そんなこと、できやしねぇ・・!

そこにいたみんな、きっと同じことを思ったに違いないよ・・・


与一さんの言葉に固まる護衛たち。


すると少し考えたようにしてから、与一さんが口を開く


「僕は泰衡殿に頼まれて弓の稽古に来た訳だけれど、
君たちの主君でもないし、客人って訳でもない。
もっと気を楽にしてきてくれないと、弓の稽古つけてあげませんよ?」

「?!!!」


ざわわっ


な、なんだこの人!
さま付けとかで呼んだりしてみろ?もうお前たちの稽古つけてやんないからな!!
みたいな?!
フレンドリー主義ですかこのやろおおお!


あわあわしてる私たちをよそに、
誰よりも早く冷静さを取り戻した将文が
与一さんに食って掛かった。



「しかし那須さま。那須さまは泰衡さまがお迎えになったお客人です。
やはり我々護衛には、御名を呼び改めるなど無礼な真似は・・・」


歯切れ悪くそう伝える将文の顔をじっと見つめ、
それからにこっと爽やかに微笑んで



「うん、泰衡殿には僕の方から伝えておくから。
君たちは僕の言うことを聞くんですよ?
だって今日から、君たちは僕の生徒だからね」


そういって、
与一さん独特の雰囲気に飲まれて、その場は納められた


不思議なオーラをまとう先生


そんな与一先生が、今日から私たちの弓の先生になりました・・


みんな、先生とうまくやれるかな?
そんな秋の日。
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