リクエスト話
□ふわり、かくれんぼ日和。
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それはそれは昔の話。
心温まる物語。
ふわり、かくれんぼ日和
「また出掛けるのですか?九郎」
今まさに出掛けようとしている九郎に、後ろから弁慶が声をかけた。
二人ともまだ幼い。
さながら15歳辺りといった所か。
「ああ、今日は天気もいいしな」
「あまり遅くならないで下さいよ」
頼朝殿に叱られますから、と栗色の彼は続けた。
「ああ、分かってる」
何かと口煩く言ってくる弁慶に向かって後ろ手を振った。
「本当に分かってるんですか?」と以前も同じような事を言って、夜中に帰ってきた九郎を思い出し
弁慶は頭を痛めた。
「本当にもう、やんちゃなんですから…」
「あー、やはり今日は天気が良いな」
一人屋敷を抜け出してやって来たのは鎌倉の海辺。
海岸沿いを歩きながら、
んん〜と大きく背伸びをする。
天気が良くて、さらさらと海の風が髪を撫でた。
「こんなに天気の良い日は、出掛けるに限るな…って。ん?」
ふと視線を感じて振り向くと
そこには小さな少女が立っていた。
「どうした、お前も散歩か?」
機嫌の良い九郎は
にこっと笑って話かける。
すると少女は九郎をじっと見つめて言った。
「お兄ちゃん…!!」
「は!?」