別路 すみれ色の章

□lost.1
1ページ/8ページ


私はきっと、
甘えすぎたんだね。

そしてあなたは
優しすぎた。


スレ違ってから気付いても、
もう遅いのにね。


馬鹿だね、私。



あなたが私から離れていく事なんて、
ちっとも想像出来なかった。



箱入りむすめのススメ
すみれ色の章

lost.1
「ありがとう」と「さようなら」




「…あ、れ……ここは?」

目が覚めると、そこは見慣れた部屋だった。


「平家の屋敷…?」


頭の芯が覚醒しきっておらず、妙な感覚が襲ってくる。


「私、一体…」


ぼうっとする頭を押さえて考え込もうとすると、
すぐ隣りから
凛と通った声が聞こえた。

「ここは平安。花子は今、平家の屋敷にいるのだ」


そう言って、にっこり笑うのは
他の誰でもない、敦盛さんだった。


「あ、敦盛さん…?」

「あぁ、おはよう花子」


笑いかけてくれるその笑顔は、まるで昔のままのよう。


「起きたようなら、私は行こう」


すっと立ち上がって行ってしまおうとする、敦盛さんの着物を掴んだ。


「ま、待って!」

「花子?」

「今はいつ?私が平家に来てどのくらいの頃?」


質問攻めにすると、
敦盛さんは少し困ったように笑いながら言った。


「花子。私は帰ってきたのだ」

「え?」

「源氏側で、神子に協力していたが、花子が心配で帰ってきた」

「帰って…?」


そこまで言うと、
もう一度優しく微笑んでから
敦盛さんは行ってしまった。


「どういう事…?」


源氏から帰ってきたということは、私が敦盛さんを探しに行っていたあの頃だろうか。

でも、それなら私は『あっちゃん』と呼んでいる筈。
どうして敦盛さん、なんて
かしこまった名前で呼んでいるのか。


ただ、一つ言えることがあるとすればそれは


「歴史が…繰り返されてる」


歴史が繰り返されてる?
っ!
それってまさか…今、ちまたで話題になってる…



「デ、デジャブだああああ!」


ばっさばっさ!
私の大声に、庭にいた鶯谷が飛んでった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ