第三章

□Vol.1
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「…が、春日望美!」

「っ!?は、はい!」

「やっと起きたか。早く前に出て、答えを書け」

「は、はい…。???」



目が覚めたら、
そこは学校で。

黒板には数学の公式が並んでいて、
先生がチョークを持って私を見ていて、

隣りには将臣くんが教科書を開いたまま、爆睡していて


私は制服で。







あれ????




私…


時空跳躍、間違えちゃった――…!!






箱入りむすめのススメ3
 〜望美ちゃん、うっかり☆の巻〜








ああ、なんだか頭が痛い…

ここは一体




どこ?






「う〜ん、なんか頭イタ…」

瞼は重くて開かないし
体も全身痛くて、起き上がりたくも無い。


大体
私、なにしてたんだっけ―?




「お、やっと目覚めたかい!」

「え?」


重たい瞼を開けば、
すぐそこにはふくよかな体をした
色っぽいオネエサンが、髪を結いながら私を見ていた。


「あんた、三日三晩寝てたんだよ」

「えっ…寝てた?」

「あぁ、そうさ。あ、これアンタの着物ね」

「うわっ!」


ばさっと投げ付けられたのは
なんだか地味〜な色の着物だった。


「え、えっと…?」

「今日からこれ着て仕事しな」

「は、仕事?」


このマッハゴーゴーな急展開に、
私はちっとも付いていけない。



「あの…あなたは誰ですか?」

「私が誰かだって?そりゃあ、こっちの台詞だねえ!」


立ち上がった、と思ったら
ずんずんとこっちに向かって歩いてくる。

歩いてくるのはいいんだけど…
そ、その胸が…胸がね!
オネエサン、超デカパイだよ!
着物から胸がはみだしてるんです
何だかエロティック・・・


そして私の目の前まで来ると
どかっと私の上に伸し掛かってきた。


「アンタこそ誰なんだい?」

「え…?」









聞けば、おキクさん(って名前らしいですよ…)は三日前の夜、
土砂降りの雨の中で倒れてる私を見つけて、ここまで運んで来てくれたらしい。

でも三日間、
私は起きる気配もないし、
ずっと夢にうなされていたんだって…。

一度だけ意識を取り戻したことがあったらしいけど、
その時「あんた、自分が何者だか分かるかい?」っておキクさんが聞いたら
「ううん」って言ったらしい。


おキクさん曰く、
どうやら私は記憶喪失になってるらしい、んだよね。
へーえ…
記憶喪失とかナニソレ…
おいしい設定じゃな(殴)



「えっ。それじゃあ私、自分の名前も分からないんですかね?」

「私に聞くな。ああ、でも確か寝言で"まるこ"…とか言ってたから、まるこなんじゃないのかい?」

「は、はあ…」



めっさアバウトな人ですね…おキクさん。

とりあえず私は
まるこっていう名前になった。
本名と違ってたらウケるよね…



とりあえず、仮に名前を付けて貰った私は


「へえ〜」

と、きょろきょろと辺りを見渡してみた。

独特の色香が漂う。
心を誘う魅惑的な匂い。
花瓶に牡丹が飾ってあったりする。



「あの〜〜。一体ここはどこなんですかね?」


ふと尋ねてみると
おキクさんと呼ばれる人は、結い上がった髪の毛を整え、鏡を置いて
言い切った。




「ここかい?ここはアンタそりゃ、魅惑の女郎屋だよ」







っっっっえ?





えええぇぇぇえ!!?
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