第二章

□Vol.5
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「えっ…今、何て…」



頼朝の言葉を聞いて
私は何年かぶりに感情を露にした



「聞こえなかったのか?そろそろ平家に里帰りしても良い…、と言ったのだ」



今更、平家に里帰り?



嘘でしょ……?




箱入りむすめのススメ2
 〜涙〜





「い、嫌です…」


言いながら、唇が震えた。

今更どうしてそんな事を言うの?

平家を離れてから
既に3年は経った。


源氏に嫁ぐ時に、
もう2度と再び、
平家の門をくぐる事は無いだろうと覚悟した。



なんで今更…



「嫌…?何故そう嫌がる…お前の故郷ではないか。久々に一族と顔を合わせたくは無いか?」

「合わせる顔なんて、無い…」

「…まぁそう頑なに意地を張らなくても良い」

「っ!意地なんかじゃなっ…」


言い終わらない内に
頼朝に頭をぐいと掴まれて、
耳元で囁かれた。



「良いか…これは命令だ。平家の元へ行き、三種の神器を奪って来い」

「っ!?」

「後白河法皇直属の命だ」

「そ…んな事、私には出来ません…」

「クッ…お前ならそう言うと思った。
が、あれは元々後白河法皇の物だ。
お前はただ『あるべき物をあるべき人に返す』だけ。何も罪を犯す訳では無い……そう案ずるな」


ゆっくり頭を撫でられる。



それでもやっぱり
私には出来ない。


例え元々法皇のものだったとしても、
平家のみんなを欺くような事はやりたくないし

それに私は…
もう一度、みんなに会うのが恐い…。




「戸惑っているようだな…。だが」


撫でる手を止め、
そのまま肩に回される。
再び、ぐいっと顔を近付けられ
耳元で囁かれる。



「お前が行かないと可哀想だ…」

「可哀想?」


誰が、と聞く前に
頼朝がそれを先に言ってしまう。




「景時が。」


「っ!!」



一瞬にして、血の気が引いた。
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