第四章
□番外編 一筋の希望
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「・・ほら、水だ。ゆっくり飲め」
「・・・・・う、して・・・」
「?」
焼け野原から少し離れた地へと移動し、
青年は少年を馬から降ろし
近くの岩場に
そっと座らせてやった。
そうして自身の腰紐が繋がっている竹筒の水をくれてやろうと栓を抜くと、
目の前の痩せ細った少年は
不思議そうに蒼髪の青年を見上げたのだ。
「ど、してですか・・・?おれは、もう生きている価値なんて・・・・」
父も母も兄までも失った。
その上住む所ももう跡形もなく焼けた。
それなのに
どうしてこの世に生きていようか。
それを聞いた蒼髪の青年は
大きく顔を歪ませて
少年の頭を数回撫でた。
「・・・・ごめんな。ごめん・・・」
「・・・・・?」
目の前の青年が突然涙を流し
苦痛に顔を歪めたものだから
少年はただ、あっけに取られて
口をパクパクと動かすしか他無かった。
「どうしておにいちゃんが泣くの・・・?悪いのはおにいちゃんじゃなくて・・・村を焼いたヤツらだ・・・・」
困惑する少年を
強く抱きしめ、青年は声を枯らした。
「っ、どうしてなんだっ…!俺は…俺はどうしてこんなにも無力なんだ…!?」
「おにいちゃ…」
「誰一人守れない…!俺は誰一人も…っ!!」
この人も
何か辛い出来事を耐え堪えてきた人なのだろうか。
少年はふと、
強く抱きすくめられる中で、
そんな事を思った。
「おにいちゃん・・・泣かないで?」
少年が青年の頭を撫でる。
青年はその動作に驚いて、ハッと顔を持ち上げると
自分よりもずっと年下の男の子が
自分の事を哀れんで、
また、自らの不幸に悲しんで
泣いていた。
「泣かないでお兄ちゃん…。おれまで悲しくなるよ…?」
「悪ぃ…。ごめんな…っ」
しばらく二人は
お互いを支える形で、静かに涙を流し続けた。