第四章

□Vol.4 平泉ってどんなとこ
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「な、何でしょうか」

きっとS属性(予測)なべっぴんさんに質問を投げかけると
どよどよっ、と
再び、広間に動揺が広まった。


「な、なに・・?」


「き、貴様ぁ!若君に対して、何ゆえ頭を下げんのだ!!」


「えっ若君!?」


「・・・・」


「ははは早く頭を下げろっ頭を!」



どっかに行った筈の役人が
物凄い勢いで突っ込んできた、と思ったら
私の頭を鷲掴みにして
思いっきり畳へと押し付けた。



「ちょっ・・・へぶっ!!」


「と、とんだ無礼を・・!若君様!」


「い、痛い痛い!頭痛いから!」



畳に押し付けられた体を起こそうと必死になっていると

すぐ目の前に
誰かの足が映った。




「よく来たな・・・」

「え?」

「コーンよ・・・。これから我が藤原一族の為に、せいぜいよく働くがいい」

「なっなんですと・・・っ?」




目線だけ上げてみると
そこには、ものすごーく偉そうに私を見下ろして…いや。見下しているべっぴんさんが居た。

相変わらず上から目線ですごく偉そう。
いや"偉そう"じゃなくて、本当に"偉い"のかも・・・?
だってみんな、「ワカギミサマ」って呼んでるし・・・

それに、藤原一族って確か・・・・?




色々と考えていると、
再び役人に頭を押さえつけられた。



「だっ、だからお前は!若君様に無礼を働くなと何度言ったら・・・!!」




慌てふためく役人を止めたのは
若君様って呼ばれている、
べっぴんさんだった。




「もう良い。開放してやれ」


「し、しかし・・・」


「俺が良いと言っている。・・・不服か?」


「め、滅相もございません!!」



ワカギミ様の言葉にビクッと体を強張らせ、
役人が私の前から勢いよく立ち退いた。
途端に開放される体と視界。



あの役人・・・本気で私を畳に押し付けやがったよ・・!痛い痛いいたーい!
許さないんだからなコノヤロウ!



立ち上がって服についた埃を払うと
傍に立っていたワカギミ様が口を開いた。




「女子で護衛に登用するのは貴様が初めてだ」


「へえーそうなんですか」


「・・・・・失態を犯したら・・・・・分かっているな・・?」



そう言って、
ニヤリとほくそ笑むワカギミ様。


い、いやいやいや!
失態犯すとか、どういう意味ですか?
私がドン臭いっぽいとか、そういう意味で言ってるんですかコルァ!




「よ、よく分からないですけど。私、負けません!初めてのおなごだろうが何だろうが、絶対、男性には負けません・・・っ!!」


強く言い切った私を見て
ワカギミ様は、ほぅ・・と声を唸らせた。



「そこまで言うか・・・」


「言いますよっ」


「・・・フッ。ならば、やってみるんだな。言っておくが、俺は言葉だけ、という人間が大嫌いでな」


「なっ!」



それじゃまるで『お前は言葉だけくさいなー』って言われてるようなもんじゃないですか!
くっそー


乙女・コーン、女の意地にかけても
ここは負けられない・・っ!・・・・と思う。弱気万歳。




「私は・・・っ私は言葉だけなんかじゃないっ!言葉だけじゃなくて、ちゃんと私・・守るんだからっ・・・!」





"大切な人を"。








「っ」



思わず、
口に出してしまいそうになった。

そんな私の態度に
ワカギミ様の瞳がきり、と鋭く光ったことを
私は知らない。



「・・・せいぜい頑張るんだな」


「は、はい!」


「・・顔見合わせはこれで仕舞だ。各自自室へ戻るように」


「「はっ!!」」



くるり、と優雅に黒髪を翻して
ワカギミ様は、去っていく。


残された護衛見習い(ですよね?)と私は
しばらくガヤガヤとざわめきの中、広間に居たが


時間が経つにつれ、


ぽつりぽつりと


各々用意された部屋へと戻っていった。





みんな、自室へ戻ったんだ。

・・といっても。
護衛見習いだから、この本館ではなくて
隔離された別館みたいな所に部屋があるんだけど。




「・・・これから私、毎日あのむさ苦しい男たちの中で特訓しなきゃいけないのかな・・」



自室へと戻る途中、
はぁぁ、と溜息をつきながら廊下を渡る。



「おばあさん・・・・元気かなぁ。今夜の夕飯は何にしたんだろう・・・」



まだあの家を離れてから一日も経っていないというのに、
早くもちょっとだけ、ホームシックになりつつある私。
ほら・・女の子だからさ・・・
涙も鼻水も出ちゃうっての・・・・



「グスン・・・ずずーっ・・チーン!」


「・・・女子がそのように鼻をかむものじゃないと思うが」


「ん?」



ちょっとだけ泣かせてよbyコーン 平泉ver
を一人、中庭で繰り広げていたら
後ろから誰かに声を掛けられた。


だ、誰だ!
私の鼻水と泣き顔を覗きみたヤツは・・・!!


バッ!と勢いよく振り返ってみると
そこには―・・・





「く、くくくくく九郎さんっぽい人!!?」


「な、なんだ!?」


「ぎゃーーーーーーー!!!!」




九郎さんみたいな、
オレンジ色のふわふわポニーテールの持ち主が
そこにいました・・・・

あ、あんさん誰やねん!?
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