第四章

□Vol.4 平泉ってどんなとこ
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「っは、はぁ!はぁっ、はぁ」


突然、目が覚めた。
喉の辺りまで、ぐっしょりと汗が張り付いて気持ちが悪い。



「最っ悪・・・また、見た・・・」


布団から起き上がり、
枕元に置いてあった水を飲み干す。


「見たく、なかった・・・・」


自嘲ぎみに笑いながら
立てた膝に、顔を突っ伏した。





「知盛・・」


声が震える。
辺りはまだ闇だ。
夢のせいで、目覚めてしまった。



「・・・・っ、」


毎晩毎晩、夢を見る。
それは全部、知盛の夢。

いつも同じ所で目が覚める。



『知盛ぃぃ―――っ!!』

泣きながら追い掛けた船上で
何度助けようと手を伸ばしても、
知盛の腕を掴めない夢。

いつもそこで夢から覚める。


「また助けられなかった・・・っぅ、っ・・」


額に手を当て、
静かに流れる涙を見つめた。


「いつまで経っても慣れないなぁ・・。だめだな、私は・・・」


強くなりたいと思っても
たった一つ。
知盛の事を思い出すだけで、
簡単に脆く崩れてしまう。



「知盛は・・・・、」


呟いて、止めた。


知盛は今何をしているだろう。
私のこと、気にしてくれてる?
ううん。
それよりも、私のこと、ちゃんと覚えてくれてる?


聞きたい事はたくさんあるのに



「だめだ・・やっぱり、恐い・・・」


両手で顔を覆った。
今の私、
本当にじめじめうじうじしてる。

知盛に会うのが恐いんだ。
この世界で生きてる知盛に会うのが・・



「みんなには・・・知られたくない」



私がこんなにも弱い人間だって事。
いつも気丈に振る舞っているのは、そんな弱味に気付かれたくないから。

私、逃げてるんだ。
知盛から。
私が恐いと思うことから。


いつだったか。
こんな私の弱さと脆さを
見抜いてくれた人がいた。



『望美さんが満月だとしたら・・・君は新月だ。対照的で、相反する二人・・・・』


『あなた様は、十六夜の君に似ている・・・。しかしどこか、儚いのです。・・・・・泣いても良いのですよ・・・?私が付いておりますから』




ああ。でも。
今、私はひとり。


ひとりで行きていく為にも、
弱音なんて吐いていちゃいけないんだ。


強くならなきゃ、強く。


私、もっと強くならなきゃ。



笑っていなきゃ。
おばあさんに心配をかけないように。
笑っていなきゃ。
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