第三章

□Vol.17
3ページ/8ページ

6日後。
…といっても、カレンダーも時計もないこの空家で
正確な月日は分からないのだけれど。

数日経って、
ようやく知盛が目覚めた。
それまでも寝たり起きたりを繰り返していた知盛だったけど、
その日は、久しぶりにきちんと起き上がったのだ。
意識を失う前よりはずっと顔色も冴え、
意識もはっきりとしているみたい。


「どう?具合は」

「ああ…上々だな」


そう言って、
寝たきりだった体を起こそうとするから
慌てて私はその間に入った。


「無理だって!一人でまだ起き上がれないよっ」


体を支えようとする私に
少しだけムッとした顔をして。


「…案ずるな。すぐ立てる様になるさ」


私の体を柱代わりに
ぐっと力を込めて立ち上がった。

だけど。
案の定、地に足をつける事に慣れていない体は
よろよろと頼りなさげによろめき、
すぐに私の支えが必要となった。


「ほら、やっぱり一人じゃまだ無理だって」


口を尖らせてそう言うと、
やっぱり顔をしかめてムッとする知盛。

そんな知盛は
病み上がりでも、相変わらずのマイペース。
一人じゃ歩けないとたった今身を持って実感した筈なのに、


「…少し歩くか」


なんて。
すぐに歩き出そうとする。


「だ、だからその足じゃまだ歩けな…っ」


無理だと思った私を遮る。


「…お前が支えてくれるんだろう?なあ、まるこ」


…あ……
余裕そうに笑った知盛の顔…久しぶりに見た。


「…無理しないって約束してくれる?」

「ああ」

「本当の本当に約束できる?」

「…分かっている。ククッ…お前も相当しつこいな…」


知盛の事だから念には念を押さないと、何をしでかすか分からない。

数回しつこく問いただした所で、
知盛の意思は変わらないとわかった私は

しぶしぶ首を縦に振る。


「しょうがないな…。でもその足じゃ、歩けてもこの近辺ぐらいだからね」

「それで良い」


こうして、
知盛の左足のリハビリが始まった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ