第三章

□Vol.5
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平家っていうブランド?に
酔い耽っていると…


「おい小娘」


いきなり後ろから
護衛みたいな人に声をかけられた。


「手伝いをする雑用が、こんな所まで出てきちゃいかん。さっさと持ち場へ戻れ」

「え?」

「さあ早く。こっちだ、着いてこい」

「ちょっちょっと待って下さい!」


首元をむんずと掴まれて
ずるずると引っ張られる。

この人、私を雑用か何かと勘違いしてるよ!
誰か助けて…おキクさーん!
あ〜れ〜〜〜



「……」


はい。
そんな訳で、やってきました台所。

いや私はヤダって言ったんだよ?
言ったんだけど、あの護衛めに無理やりここまで連れてこられちゃってさぁ〜…もう、とんだトバッチリですよね…!


「こらっボケッとしてないでこれ運びな!」

「あ、あわわ」


そんなこんなで台所に立っていたら
厨房から、豪華な料理を持ったおばさんが出てきて、どさっと私の手の上に置いた。


「この鶏肉料理は重盛さまに出すんだよ」

「は、はぁ…」


ぐうぅ〜
料理をみた途端、私の腹が鳴った。
おばさんにじろりと睨み付けられる。


「つまみ食いしたら許さないよ?」

「分かってます…」

「んじゃ行っといで!お出ししたら、さっさと戻ってきて次のを運ぶこと。分かったね?」

「ふぁ〜い」


とことこと廊下を歩く。
何が悲しくて、料理を配膳しなきゃいけないっていうんですか?

ぐうぅぅう〜


「お、お腹すいた…!!」


よだれを垂れ流しながらも
やっとの思いで、宴会場に戻ってきた。


「し、重盛さん!」

「ん?」

「これ鶏肉です!どーぞっ」


ずずい、と料理をテーブルの上に置いた。
だ、だって早くこの料理から離れないと
私が食べちゃうかもしれないよ!


「お前も来てたのか。…ぷっ!」

「?」


重盛さんたら
私を見るなり笑い出した。


「お前、ヨダレ垂れてるぞ!ぶわっはは!」

「!!」


ごしごし!
急いで口の周りを手で拭った。

やだ、見られた…?!ひぃ!


「あー面白ぇ〜プフッ!」

「わ、私まだ仕事ありますから!んじゃ!」


慌ててその場から逃げ出した。
嫁入り前なのにヨダレ見られた…!しかもみんなの前で言いふらすことじゃないじゃんよ!重盛さんってひどい…!!


あわあわと台所へ戻っていった。



「兄上、あの方は…」

「ククッ、来たか…」

「お知り合いですか?」

「ああ。まあな」

「……」

「まるこは中々興味深い女だぜ…」

「…まるこ、というのですか」
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