第三章
□Vol.5
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「おかえりまるこ」
「ただいま帰りました〜」
九郎さんから逃げて、
やっとの思いで居候先に辿り着いた。
「九郎とうまくいってるかい?」
家の中に入ると、
おキクさんが昨日の分の清算をしていた。
「う〜ん、うまくいってるかどうかはよく分かりませんが…ぼちぼち、ですかね」
「そうかい。頑張んな」
「あい!」
「あ、それと」
三階へ上がろうとしたとき
呼び止められた。
「今夜は開けときな。用事があるから一緒に出かけるよ」
「なんの用事ですか?」
「それはまた後で話す。あ、それとこの前弁慶に選んでもらった着物があるだろう?あれを着て待ってるんだよ」
「??はぁ〜い」
よく分からないけれど
とりあえず返事をしておいた。
…おめかしさせて、どこ行く気なんだろ。
−数時間後−
「っふ〜。やっと終わったー!」
今日のノルマ達成!
頭に着けていた手ぬぐいを取って、裾を縛っていた紐も解いた。
「じゃあ着替えるとしますかね」
いそいそと部屋に戻って
キチンと掛けられていた着物に袖を通す。
弁慶さんに選んでもらった色…
「おおっ、気持ちがしゃんとする…!」
綺麗なものを着ると背筋が伸びるってのは本当だよね。よし、こうなったら、調子こいて髪も結ってもらおう…!
ドタバタと廊下をかけて
おキクさんの部屋を開けた。
「おキクさ〜ん、髪結って下さい!って…!?」
驚いた。
そこに居たおキクさんは
いつもの気丈なアネキなおキクさんじゃなかったから…!
べ、べっぴんさん…!!
「う、美すぃ…!!」
「有難う。ほら、ここに座りな」
言われるがままに座って
それから色々いじって貰った。
っていっても、こっちの世界の人より短いからアレンジも少ないんですが、ね…
「出来たよ」
「うわぁ…!変身したよー私っ」
「じゃあそろそろ出掛けるよ」
「はあい!」
こうして
プリズムパワーでメイクアップした私とおキクさんは
日が傾き始めた頃、宿を後にした。