第三章

□Vol.1
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「じょ、じょじょ、女郎屋?!」

「あーそうさ。そんなに騒ぐな。そして私はここの女店主、おキクだよ」



な、な、なっ…!
女郎屋って…あの女郎屋?
女が男に体を売る場所…うっふんあっはん致す処ですよね…?


「な、なんてこった…」

「まーその体調じゃ暫く外へは出られないだろうねぇ」


おキクさんが
じろじろと私の体を舐め回すように見る。


「……」

「しかもまぁ、その体じゃあ、旦那らを喜ばせられもしないだろうし」

「っぐ…!」


アイタタ…。
なんて痛いとこを付くんだおキクさん…。
それは言っちゃいけない言葉だよね…いくら私が貧相な身体をしてるからってさ…



「まるこ、暫くうちで雑用やってくかい?」

「へっ?」

「どのみち記憶を取り戻すまで時間もかかるだろうさ。身寄りも居ないんだろ?いい話じゃあないか」

「そ、そうですか…?」

「ああ。そんな訳で時間だ。私は仕事に行ってくるよ。アンタはそこら辺のモノ適当に食べて今夜はもう寝な」




…そんなわけで、
何故か私はここ、女郎屋で
おキクさんの雑用係として働くようになりました。


な、なぜ…?


でもね
おキクさんの言ったとおり
目を覚ます前のこと、全然覚えてないんだよね。
自分が何者かすら分からない。

生活していく上で、必要最低限なことは覚えてるんだけどな…。
不思議だよね。


「まあ、いいか。
とりあえず今日は寝ましょうかね」

頭もまだ痛いしね?



「おやすみなさーい…」




そうして私は再び布団に倒れこんだ。
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