リクエスト話
□ふわり、かくれんぼ日和。
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何が一体どうなったのか。
三歳くらいだろうか。
ほっぺたがマシュマロのように餅肌の少女は、九郎を見つめるや否や
ダッと駆け出して、九郎の足にしがみ付いた。
「お兄ちゃん!」
「俺はお前の兄ではないぞ」
「お兄ちゃん!」
「いやいや。俺の話をちゃんと聞いてるか?」
にっこにこと微笑みながら自分にしがみ付いてくる少女。
あまりに愛らしい姿に、
九郎も九郎で中々悪い気はしない。
「なあ、お前の名前は何て言うんだ?」
「あたち?あたちはまるこってゆーの」
「そうか、まるこか」
名前を聞いて頭を数回撫でたあと。
九郎は自分の足にしがみ付いていたまるこを持ち上げ、
そのまま抱っこをする。
「よし、じゃあお前のご両親の所へ行こう。どうせ迷子なんだろ?」
馬鹿が付くほどお人好しな九郎。
見ず知らずの迷子を
無事にお宅まで届けるつもりでいた。
しかしまるこは
「やだ!お兄ちゃんと居たいもん!」
九郎の腕の中でイヤイヤと首を振る。
じたばた暴れ出す少女を見て
九郎はため息をつき、そして考えた。
「弁慶なら、何とかしてくれるだろうか…」
そしてせっかく来た道を引き返し、再び屋敷へと向かった。