第三章

□Vol.18
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−望美side−



苦しいよ…

助けて。助けて…。


私はこんなに弱くなかった。
たった一人。
あなたの存在が
こんなにも私を弱くする。
揺るがせる。

だって昔からずっと一緒で
絶対に、離れ離れになる事なんて。
想像もしていなかったから…


箱入りむすめのススメ3
 〜助けて〜



ここの所、頭がガンガンと痛む。
お母さんに「薬を飲むか」と聞かれたが、薬で治るものならば
こんなに苦労はしていないだろう。


学校から帰ってきてすぐに
ベッド脇にかばんを置いて、戸棚から一冊のアルバムを取り出す。
パラパラと手馴れた手つきでそれを捲ると、
一番に視界に入ってくるのは


「将臣くん…」


そっと指でなぞる。
幼い頃からずっと一緒だった。
片時も離れたことは無い。…向こうの世界へ飛ばされるまでは。

次のページを捲る。
どんどん成長していく私達の写真。


「あはは…可愛い。将臣くんや譲くんも、こんな可愛い時期があったんだぁ…」


思わず笑みが零れる。
立ったままだと見づらいので、
制服のままベッドへ腰をかけた。
ギシリとスプリングが軋む。


「あ、これ。小学校のときだ。確か遠足に行って私が迷子になっちゃったんだよね」


散々泣いた後だろうか。
アルバムに映っている私の眼は真っ赤で、ふてくされた顔をしている。


その時も確か


「将臣くんが…迎えに来てくれたんだよね」


幼い彼はたった一人で私を見つけ出してくれて、手を引っ張って先生達の所へ連れて行ってくれたという記憶。
わんわん泣き喚く私を優しくなだめながら、何度も「大丈夫」と勇気付けてくれた。
同い年のはずなのに、
とても頼もしく思えた。


「その後も何度かあったなぁ…」


流石に中学生で迷子になんてならないけれど。
度々困ったことや、
悩んでいることがあると
将臣くんに聞いて貰っていた。

手元のページは更に進む。


「中2の時は確か…フォークダンスで踊る相手がいなくて泣いてたんだよね」


今だからクスッと笑う事が出来る。
しかし当時の私からしたら、
ダンスで踊る相手がいないという事は本当にショックで、自分には魅力がないのだと物凄く落ち込んだりもしたものだ。

そんな時も
気が付けばいつも将臣くんが居た。

少し困った顔をして

『なに泣きそうな顔してんだよ』

って、笑いながら大きな手を差し伸べてくれたっけ。
私は半べそ掻きながら、
その手にしがみ付いたよね。
その時からかな?
将臣くんへの気持ちが、
少しずつ変わり始めたのは。



ハラリとアルバムから一枚の写真が擦り落ちる。



「あ、これ修学旅行の時の…」
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