第三章

□Vol.13
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箱入りむすめのススメ3
 〜プチ・1つ屋根の下〜







「あ、おはよー知盛。また寝起き?」



一人で先に朝食をとっていたら、
向こうの方から知盛がやってきた

…色々すごい事が起こってる…!



「寝癖ひどいよ!ライオンキングみたいになってるよ!」

「らいおん…?」

「あぁ通じないんだっけ。まぁいいや…とにかく座ったら?」



座るように促すと
私の真正面に置かれた膳の前に、知盛も腰を下ろした。

こうして一緒に朝食をとるようになって、まだ日は浅い。
離れの屋敷でも食事をとることは出来るらしく、毎朝決まってこの時間には、2つの膳がきちんと用意されていた。




「この離れの屋敷って、他に人居ないの?」


箸を止めて正面を見ると、
まだ夢の世界から覚醒しきれていない知盛が
ゆっくりな動作で、お吸い物をすすろうとしていた。


「いや…二人ほどいるな…」


「へぇ〜。女官の人?」


「あぁ」


止めていた箸を進めた。
やっぱり知盛は、寝惚け眼のままだった。




昼。
特にする事もなく、縁側に腰かけて、ダラダラと腐っていたら
いつ来たのか不明な知盛の姿がまた現れた。


「あ、知盛」

「よう…」

「よ、よう。…私、思ったんだけどね。六波羅に来てまだ一度も重盛さんや重衡さん達に会ってないよね?」

「…それがどうした」


どうでもよさそうに、
すぐとなりに腰をかけた。


風に流れて、桜の花びらがちらちらと舞う。



「挨拶とかしに行かなくて良いのかなー、と思って」



その言葉を聞くと
知盛の眉間に皺が通った。


「…行かなくとも良いだろう」

「なんで?」

「…何でも、だ」

「……」

「……」


二人して黙りこくる。
なんだって知盛は、
私と人を会わせたがらないのか分からない。


「知盛って変なのっ」


そしてごろん、と横になった。
春の穏やかな風が気持ちいい。

ゆらゆらと、瞼が重みを増していく。


「知盛…」

「……何だ」

「私寝ちゃうかも…」

「……」


そうこうするうちに
夢の世界へと引きずりこまれる。


「おや、す…み…」

「……」


ついに私は眠りに堕ちた。


「…クッ、よく俺の前で眠れるな…」


耳元で静かに声が聞こえる。


「…まぁ。春眠暁を覚えず、と言うから仕様が無い、といった所か…」


隣りで知盛が何かを言ってるような気がした。
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