短編連載小説

□語り物語
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 それは父から聞かされた1つのお話。



「私がまだ造られて間もないころの話だ」

 父はこう、始めた。



  Freezing moonlight night(凍る月夜)




 あれはもう今はない研究所で起きた恐ろしい事件だ。当時それを目撃したのは私と兄とアイス。ルビーはまだ起動されていなかった。
物音がするのは第四倉庫。

「ねぇ…ネルティフが見てきてよ…」
 カタカタという物音に目が覚めた俺達は3人で固まって廊下に出て、その物音がする部屋の前まで来たのだ。
「気味が悪いよ……兄さんが行ってくれよ…」
「な、なんで俺が?お、お前行けよ…」
ハーデスも名前とギャップがあるくらいの怖がり。
「じゃあ、じゃんけんで決めよう…」


「行ってらっしゃい」
結局2人に負け、私は魔の四番倉庫へと入って行った。


「いったい何がいたと思う?」
「ん〜……オバケ?」
 オドオドする息子シキはそう答える。
「いや、そんなものじゃなかったよ。もっともっと……恐ろしいものだ」
怖がりのシキをビビらせるのは本当に面白い。今も私の寝巻をぎゅっと握りしめ、びくびくしている。
「其処に居たのはな……」


「ぎゃああああああああっ!!!」
 思わず私はその部屋から逃げ出した。
「どうしたネルティフ………なんじゃこりゃ〜〜〜っ?!」
兄ハーデスはトランサーからハンオガンを取り出し、部屋の中を撃ちまくる。
「ちょっ?!何々……キャアアアアアアアッ!!!」
アイスが廊下の壁にへたり込んでいる私に抱きついてくる。
「……くそっ!きりがない。一端閉めるぞ」
バタンと四番倉庫のドアを閉め、人口汗腺から噴き出した液体をぬぐう兄。
「ねぇ……どうしてあんなものが?」
未だに震えているアイスがハーデスに問う。
「……何かの荷物に入ってたんだろ」
思い出すだけで背筋がゾクゾクする。


「其処に居たのはな……ゴキブリの大群だったよ」
「ヒィッ!」
息子の脇腹をそーっと撫でながら話を続ける。
「実験用の原生生物の資料に沸いていたのが、モノメイトを食い荒らして増えて行ったんだろう。壁一面に真っ黒な集団がいたんだ」
こちょこちょと息子の脇腹をくすぐる。
「や…やだ……」
そっと手を伸ばし、シキの背中をくすぐる。
「あ、シキの背中にゴキブリが」

 その後息子は盛大に悲鳴を上げ、それを聞きつけたラファエルが鳳凰を持って私の家に駆け込んできた。……事情を説明した後に彼の鉄拳を食らったのは言うまでもない。



「で……その部屋に何がいたと思う?」

 親になった俺は息子レイの脇腹をくすぐりながら昔父が話したように言う。



   ……そしてその日、レイの悲鳴を聞きつけて駆け付けた父ネルティフにボコられたのは言うまでもない。


オワリ
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