文
□※キスとスキ
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しかし納得がいかないのも確かだったので、こっそりとため息を吐く事で気持ちを溜飲させた
「ん、いやまぁ…そなんだけど、ね。あ、でも誘惑してきたのはあっちだよ?」
「殺されたいのかお前は‥」
話を逸らしつつも佐助はふと心の中である疑問が浮かんだ。
「‥な、あの奉公の子って‥今日もだったっけ?」
「主の身辺はお前と小助の任務だろう。俺が知るか」
「‥。」
「…猿飛、どうした」
「長!霧里様!」
木陰から一人の影が飛び出し、二人は身構えるが見知った忍に警戒を解く
現れたのは同じ真田十勇士の一人、穴山小助であった
「お、噂をすれば何とやら?どした」
「―朱色が亀が拾われました」
「!!」
小助が呟いた言葉―言伝に二人は目を見開く。
それは、主人である幸村がいなくなったという意味だった
「…捜したのか?何時だ」
「城内で…忽然と。昼食の後に」
「城‥良かった、それならたぶん旦那のかくれんぼだよ。何かあって、後ろめたさかなんかでどっかに隠れてるだけ」
(‥誰にも言わず雲隠れするなんて珍しい。何かあったのかな‥?)
よもや自分のせいと思ってもいない佐助は、一人ごちる
ふと、見上げた空にうっすらと煙が上がるのを見て、その目が驚愕に大きく見開かれた
「―うそだろ、おい。まさか」
「……加えて敵襲です。相手は忍‥」
「それを早く言えっての!!」
小助の言葉も最後まで聞かず、佐助は城へと引き返す
(隠れている場所はわかる‥お願いだから無事でいてね!)
「………。」
夕刻。
今日幸村の頭の中はずっと、朝の居間での出来事で占めてしまっている。
その為空が闇に変わりつつあっても何も力が入らず、無気力なまま時間だけが過ぎていた