ブック2

□DO・MI・NO!!
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「親ちゃん、おはよん」

「…おめぇはよぉ、何時になったらその呼び名をやめるんだ」


蒼い、蒼い空。
蒼天に輝く太陽は梅雨明けとも重なり、眩しい程に屋上を照らしている


コンビニの袋をぶら下げ、ゆったりとした足取りで来たこの学校の高校生、猿飛佐助は同じく同級生である長宗我部元親の隣に立ち座る。
コンクリートの地面の上に何も広げていない相手に袋の中からパンを取り差し出すと、一転して愛想よく礼を言い受け取った

「今日何限?」

「二限だ。ったく、ここに来る意味ねぇよ」

「マジで?」


第一中央都市と呼ばれるここ、首都第一東京は政治の不安定さから急激に治安が悪くなっていた。
政治の要である首相とやらがもう二週間も行方不明のせいだろうか。ありえない事態にブラウン管の報道は好き勝手に騒ぎ立てている。
番組が異なれば全く違う見解を展観している様に誰が真実を述べているかなんてもはや分からないが、少なくともラジオの政務放送が一番正確だと佐助は思っていた

そうして社会が機能していない為か、佐助や元親が通う高校に教師が規定通りにこない。三講目で終了した授業は内容が乏しく、佐助は失意のまま屋上に来たのだがそれ以上に元親のクラスは悲惨だったらしい

ペットボトルの蓋を空けて、勢いよく中身を飲む。
蒼天だけが鮮やかで、眩しさにただ目を細めた


「先進校のここがこんなんじゃあ、他はもっとボロボロだね。親ちゃんは今日のeネット見た?前に言ってた男の懸賞金上がってたよ」

「何?!本当かそりゃ、ならようやく動けるってもんだ」

「親ちゃんの作った組織、すごいもんねぇ。あの網にかかったら俺様でも逃げられないかも」

「茶化すな、猿」

「あはは」


とりとめのない会話をしながら、胃袋にオニギリやパンを詰め込み、飲み物を流し込む。
広がる景色に、盛大な鐘の音が響き渡った


「お、十二時の鐘が鳴ったか…猿飛、おめぇ携帯もってるか?」

「あー‥ごめん、俺様の三世代前の携帯だからテレビ見れないよ」

「はぁ?!マジかよ、お前携帯は意外なもん使ってんだな」


驚きつつも仕方なしに元親が立ち上がる。

「行くの?親ちゃん」

「ああ。それより猿飛、以前の話は考えてくれたか?」

「あー‥パス。そんな気分じゃなし」

「そうか。」

あっさりと頷き、じゃあなと元親は手を振り屋上から去っていく。

「帰るの?」

「用は済んだからな。仕事に行く」

階段を降りていく甲高い音を耳にしながら、佐助は堅い地面に寝っ転がり腕を頭の下に組むと、ゆっくりと目を閉じた。



この国が三次世界大戦により、三つの国に分かれてから五十年がたった



一つはここ、関東にある旧首都東京を中心にした第一中央都市。二つ目は国を名古屋から九州までを地域とした新都市第三東京、最後の山梨北部から北までを範囲としたのが三つ目の東京であり、佐助の故郷だった


よくもこの狭い国土の上で争ったものだといいたいが、実力というより国を纏められる新しい指導者がいない為この国は依然拮抗するように三国が並びたっている。


関東の事情はこの様子だが、佐助の生まれ故郷である北国は有力な財閥が幾つも存在し、その権力を占めている
中でも圧倒的なのは越後の上杉謙信と甲斐の武田信玄の二人であった。


この二人の力関係は正に拮抗しており、北国の支配統一を目指す武田家にとっては非常に手痛い存在だ

どうにかして上杉謙信を破り、覇権を握るために武田家では水面下で策を練、ありとあらゆる人物を放ち情報を集めていた


佐助は、その内の一人だ。

甲斐の国、山梨に位置する武田家の者の一人に血の繋がりはないが養子として迎えられ、育った。
元来優秀な素質が為に上の人々の目に止まり、やがて信玄直々に命令を受けるまでになった


そうして、将来を見込まれてこの情報が多く飛びかう都市、第一東京の高校に特待生として送られたのだった




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