文
□消えた星空
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「あー、こんなトコにいたぁ」
狂気が去り静けさを取り戻した戦場の夜、妙に気の抜けた声が響く
小高い丘の上で大の字に寝ている主人を見つけ、その様に呆れた忍は小さな包みを空に放り投げる。暗やみの中放り出されたそれは鳥になり、本陣のいる方へとはばたく
それを見届けた後、忍は振り向き目を細め腰に手を宛てた
「お説教でござるか?佐助」
「あったりまえでしょー!どこほっつき歩いていたのさ、帰還のほら貝はずっと前に響いてたのに帰ってこない、誰にも俺様にも何も言わずに消えて!」
「はは、すまぬ」
「何それ、可愛くないなぁ」
「さーすけー」
「はいはい」
「政宗殿に負けたのだー」
「あっそ」
「情けをかけられたのかのぅ‥某、悔しいでござる」
「旦那らしくない、次にやりかえせばいいじゃん?」
隣に歩み寄り、膝を抱えて座る。
猫っ毛の幸村の跳ねた髪に硬い手甲を付けた儘の掌が撫でてきて、幸村はその違和感にただ黙って目を瞑った
「ありがとう、佐助」
「次は勝ってね、旦那」
じゃないと俺様が倒しちゃうよー、とからかう相手にふふと笑みを零す。その笑顔に佐助は慌てて幸村から顔を背けた
「佐助、」
「‥んー?何?本陣に連絡したから、戻らないと…」
「今日は某と、とことん話さぬか?」
沈黙した佐助に幸村がその横顔を見つめる。闇で姿がよく見えない闇の生きものが、顔を赤く染めている事に気付いているのか、いないのか幸村は歯を見せて笑った
「何それ……」
「そのために抜けてきた。佐助、話そう」
「……」
「返事」
「はい‥」
「うむ!佐助ー、」
「‥はいはい?」
「接吻」
くい、と裾を引っ張り覗き込む。
目を丸くし、嬉しそうに笑うと忍は屈み込み柔らかい唇に触れた
「旦那、破廉恥」
「佐助」
頬に、触れる。離れる前に相手のその口にもう一度触れ、鼻に、右の目蓋にと触れていく。
重なっていた冷たい手が主人の手を握り締め、その指に、口付け含ませる。
「鉄くさいね、旦那の指…なんか無性に口付けたくなる、好きな相手だとさ」
「‥破廉恥だな」
「お互いにね」
そのことばに二人がにっこりと笑い、寄り添った
「しょうがないから朝まで聞いてあげる。佐助が好きだー、って一杯言ってね」
「佐助も、いっぱい話すんだぞ」
誰もいない星空の下、二人がまた笑った
希望通りに二人が話して聞いてを繰り返していれば、あっという間に朝はやってきておりいつの間にか星空は消えていた
あまあまだらだらな文を‥ちゅーとはんぱすみませ!