文
□※キスとスキ
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「わ、旦那!ゴメン、泣かないで」
慌てて傷つけないように指を抜き、佐助は幸村を抱き締める。
(やっぱ、無理‥か)
残念に思っている自分を一蹴し、幸村の頭を撫でる。触れるだけで感じるのか、小さく喘ぐ姿に佐助は自制して言った
「旦那、薬、ちゃんと飲めば治るから。心配しないで」
「‥ぅっ、さす、け‥」
「……本当は俺様、最後までしたいけど、旦那にそんな事させられないし、あの野郎と同罪になるし‥我慢するね」
そう言うと首を首刀で叩き、佐助はにっこりと笑った
「少し寝てて。旦那、チョー好き」
倒れた体を受けとめ、一度強く抱き締めると昏睡した幸村を上着で包むと、佐助は騒がしい地上へ向かい薄暗い蔵を後にした
「旦那ー、お薬の時間ですよー」
障子をからりと足で開け、盆を手にした佐助が部屋へと入る。
布団の上で座っていた幸村へと近付き、隣に座ると薬を手渡した
「はい、飲んで。ジジイ特性の解毒剤だけど、残る可能性はあるかもしれないしね」
「……佐助」
「ん?」
朗らかな笑みを浮かべ、こちらの言葉を待つ佐助に幸村の目が細まる。
「‥いや、薬。苦そうでござるな」
「あはは、もっちろん。でも効くからちゃんと飲んでね」
「ん。‥ありがとう、佐助」
肩を竦め、佐助はそのまま立ち去る。足早に去っていく忍に、苦しそうな顔で幸村は見送った
「……あー‥もぅ。俺様、自重しろ」
閉じた襖越しの廊下。
脳裏に焼け付いた幸村の恥態が消えずに、佐助は赤くした顔を隠し、廊下を歩く事無く飛び上がり消えた