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□深夜3時の狂騒
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空になった発泡酒とビール缶の数の多さに、片付け役は誰なのよと一人呟いた
「―‥ほら、親、ムネ、幸。起きなよ、コタツにいるとはいえさー、さすがに風邪引くって」
「んー‥」
「‥すー‥」
「親は寝ている時だけ静かだねぇ。ムネは‥‥やばい、な」
そういう趣味の奴がいたら、思わず奸な気持ちになりそうな寝顔。
無論実行に起こそうとするものなら、あの宗家代理人の刀の錆になろう
「もー、二人共悪酔いしすぎ!!全っ然起きないし‥幸?」
ちらりと見る。幼なじみは、頬を赤くして寝ている。
「またお腹出てるし‥ほらほら、起きなさい」
「ん〜‥」
嫌々するように唸り、幸村がごろりと寝返りをする。髪から覗く白いうなじに佐助の胸が鳴った
「幸?」
「んー」
「起きなよー」
「さぁすけぇ〜‥うひひ」
「えっちな事するよ」
「するな、馬鹿猿」
リビングの扉から現れた、黒の半袖の上に革のジャケットとジーンズを履き、オールバックをした頭に頬に刀傷をつけた男に佐助は驚きもせずに見上げる。
「あ、片倉さん。何時入って‥て鍵は?!」
「悪ぃが合鍵を作らせて貰った」
犯罪、という二文字が頭の中に浮かぶ。しかしこの相手の職業上恐ろしくて口には出来なかった
そのまま何故か土足で上がると(あ、やっぱりとんがり靴)片倉と呼ばれた男は政宗を担ぎ、佐助へと向き直った
「悪いな、うちの政宗様が迷惑をかけて―‥すぐに帰る。飲み食いした金なら払うが」
「そういう事じゃないでしょ、片倉サン‥あ、それと、ほい!」
苦笑した様に笑うと、佐助はコタツの上の空き缶を片付けていくる。そうして、思い出したかの様にジャージの中のポケットを探り、片倉へと投げ掛けられた
咄嗟に受けとめ、掌の中を見れば鍵があった
「‥これは?」
「この家の鍵。上げるよ、わざわざ作らなくても、さ」
「欲しいなんていってねぇが」
「ハイ、勘違い。それはムネに上げて」
片倉の額に血管が浮かぶ。しかし、今度は怯むことなく佐助の口の端が上がった
「―片倉さん。俺様も経験あるけどさ、過保護すぎるのは相手にとってうっとうしいだけだよ」
「だからといってこんな時間まで馬鹿騒ぎとは感心しねぇな」
「解ってないなー、旦那は」
片付けていたビール缶から、飲み残しの缶を見付け飲み下す。