文
□サド忍シリーズ
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その1 (いじめる)
「さああすぅううけえぇぇぇ!!」
「………」
また暑苦しく来たね。
そんな感想をありありと浮かべた、そんな引きつり顔で佐助はこちらへと向かい全速力で爆走してくる主人を迎える。
嫌そうに立ち上がり、それでも抱き締めて受けとめるため手を無意識に広げた
だから、まさかその主人が自分を目前にして急停止をした時は、天変地異の前触れかと目を見開いてしまった
(って、俺様大袈裟!!)
「‥旦那?どうしたの」
「いっ、いっ、一大事でござるぅ‥っ!」
「一大事ぃ?」
思わず声を荒げる。一大事という事に驚いてのことだが、主君である幸村が忍の自分よりも先に情報が来るなんてことはありえないからだ
「何ソレ?そんなに走って慌てる程の一大事ってないよ。で、何なの?」
冷たくあしらう忍に対し、幸村は自らの背を指差す。それにも目を向けずに佐助は言った
「米俵だねぇ、旦那がしょってんの。で?」
「さ、佐助!佐助はこの米一俵よりも軽いと聞いたが‥真でござるか?!」
「どっから聞いたの、それ‥まぁそうだよ。忍ってのは身軽でなきゃ勤まらない仕事だから、体重は大体一俵位までが目安なんだよ」
「‥ちなみに、米一俵はどの位「60Kg。旦那は51Kgだったっけ?アハハ、旦那は華奢だねー」
「反応が薄いでござる!!というより何故某の体重を知っているのでござる?!」
「つーか黙って下さい。耳元は煩いからさぁ」
「‥」
本当に黙った。いや、微妙にぼそぼそと何か言っている
「は?何?」
「‥さ、佐助は某が嫌いなのか?」
「何で?」
「そ、その‥嫌いだから、冷たい‥のかと」
目を丸くする。
上目づかいに反応を待つ主君に、佐助は嬉しそうに笑った
「好きだよ。好きだからイジめるんじゃーん、旦那ってばコレ常識」
「…そ、そうなのでござるか?」
「そー、俺様、旦那をいじめるの大っ‥‥‥‥‥好きだから。」
「‥」
それは、違う。よくわからないが微妙に違う。
「‥さ、佐助。何か、違う。」
「えー、そうお?それよかもうお話終わりなら帰っていい?」
「‥か、帰ってしまうのか?」
「うん。」
帰るといっても佐助の仕事は幸村の護衛なので、ただ姿が見えなくなるだけなのに佐助はそう言わない。
「‥わ、わかった」
「うん。それじゃね、旦那」
一瞬で消え去った相手に、幸村はしばらく呆然と立っていたがやがてしょんぼりと肩を落とし廊下を歩いていった
米俵を担ぎながら。
「‥旦那、ちょー可愛い‥‥」
その背中をこっそりと忍が見つめている。
自分の部下がサド忍だと幸村が気付くのは、もう少し先の話
(サド忍シリーズ。ごめんなさい)