連作短編シリーズ―空に広がる希(のぞみ)―
□その1 ある日の帰り道
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「ねえ、どうして学校に来て勉強しなくちゃいけないのかなあ」
それは、いつもの夕方の帰り道でのことだ。
俺の幼馴染みの深空(みそら)は、いきなりそんなたわごとを言った。
「は?」
俺はちょっとした侮蔑の意味をこめて、笑う。
「んなこと俺に聞いてどーすんだよ?」
「んー、なんていうか、自主的に学校の勉強を放棄している広希(ひろき)なら、学校で勉強する意味がわかってるかなあって、思ってさ」
「………」
絶妙な皮肉。
これたぶん、けなされてるよな。
いや、こいつはそんな性格じゃないから、この場合、褒められているのか。
どっちなんだ一体。
まあ、その点については突っ込みをいれるのを止めておこう。
その代わり俺は、質問で返す。
「なあ、そんな馬鹿馬鹿しいこと聞いてくるなんて、何かあったのか?」
「なっ?!馬鹿馬鹿しくなんかないよ!!」