いまとときめきの物語

□桜の季節の二人の契り
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ふと顔をあげて窓の外へ目をやると、散りかけていた桜がまたひとひら、音もなく地面に落ちていくところだった。


私はいつものように図書室で、需要がないままに埃を被っている百科事典をめくっていた。

以前友達は、事典を通読するなんて何を考えているんだ、というふうに言ってたけど、別に最初から最後まできっちり目を通しているわけじゃない。

指を差し入れ、たまたま選ばれたページに書いてあることを読んでいるだけだ。豆知識もつくし、いい時間潰しにもなる。

廊下から、まだ新しい制服に慣れていない新入生の楽しげな声が響いている。グランドからは、運動部の威勢のいい声も。

そういえば、もう高校二年になってしまったなあ、と、改めて思った。十七歳って、昔はすごく大人だと感じていたけれど、今の私はどうだろう?


その日の放課後、「白鳥」という項目に目を通していた私は、あることを思い出して慌てて立ち上がった。


どうしてこんな大事なことを忘れていたのか。自分で自分に舌打ちしながら、図書室を後にする。

 
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