詩集C

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14歳
わたしは決して優しくなかった

その瞳の小さな魔法にかかるために
小さな猫を助けるだけで
わたしは決して優しくなかった

ただ生まれてくるのは
夜に差し掛かろうとする
羽ばたこうとする時間

神様とのキス
流れていく車線だ

わたしの友達は
幸せなのだろうか

わたしでは無いものは
大きな木と芽
それと夜空だけだ

その開花の芳しい瞬間
わたしは全てを見たい
生き残った小さな瞳

猫の肩には
乗せられるものは何もなく
わたしは決して優しくなんかなかった


例えば
君の幸せは
滅多に開けない抽斗の中
懐かしい玩具を見つけることだとして

あの時の海がどれだけ遠かったかを
握っていたクレヨンの擽ったい匂いを
思い出せるかい

そのもどかしさこそ

わたしにとっての好きな色
好きな食べ物
好きな作家
木と芽と夜空

14歳からの
わたしの好きな人

14歳から
わたしは優しさを
胎内のような
日々のなかからもらう…




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