詩集C

□一枚絵
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夜がおわった。
錯覚じみた夢をみていた僕
眠気染みたからだを温く
シャワーで流そうと布を剥ぐ
髪の毛に絡まったぬるま湯は
どんな色をして落ちていくのかと見てみようと思っても
泡避けの目蓋が遮って
わけも無く溜息を吐きかけた



朝がおわり何処かに出掛けようかと思ふ。
肌はまだ熱いけれど
出るか、誘うか、行くか、連れるか、待つか
僕が只自由なのが嬉しいと。



終焉と発端は同時にくるわけじゃない
昼のはじまり
飲み下したような食事の悪い後味を
怠惰な気持ちの言い訳にした



昼がおわりそうになる。
今日もまた無駄に日没を迎えるのかと
急かされるように外扉を開いた



夕方が始まった。
嘴太ガラスが尖った剣幕で
僕を吠えだした
うるさいよ。しね。
躊躇も無く悪態を吐きかけた



まだ夕方の途中
爪先の延長線にパチンコ玉が光った
―なぜだろう
僕はそれを拾い上げた
―なぜ光ってる?
もうひとつの世界が、
もうひとつの太陽が、
この中にいたのだった。



夜がはじまった。
パチンコ玉が僕の体温を受けて
少しあたたかくなっていた。




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