詩集C

□飛蚊症
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空の果てまで貫く赤い星にこびりついているはずの黒い点が、
近頃僕の眼の中を泳いでいる。
ふと気付いたらそいつは
もの言いたげに、何か言いたげに
不規則に僕の眼を遮った。

僕は他人とは違うのだと、
僕自身の脳が見つけたのは
黒点を患うよりずっと前のことだ。
僕は他人より出来が悪いと、
何かが枯れてゆく音に気付いて
涙も出ない。涙が出ない。

知らない振り 気付かない振り
見えない振り きこえない振り
僕の蚊がいつそうしたと言う?
全部僕のせいにして
本当は弱いし 苦しいし
僕はばかだとわかりたくなかったし
こころ傷つきたくなかった。

やっと出た涙に
飛蚊症は溶けずに
尚更不規則に僕の中を泳いでいる。






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