詩集C

□ごみ
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イヤフォンしたまま寝ちゃったんだよこの前。電車ン中で。

自分にびっくりしたなァと笑ってみせたら、エ?私もよく有るよ。別に、その答えには興味がなかった。
次の駅でこの子が降りたら、稼働してもらうであろうバッグの中のMP3プレーヤーが、私の居眠りによって無駄な働きをしてしまったことと、ミュージシャン達がその約10分の間頑張って歌い続けていたことで、私はとんでもない贅沢をしたな、と思った。

バッグに視線を落とすと、ぶら下がるオレンジ色のテディベアが目に入った。それを何となくじっと見つめていると、それなのに、くまは私とは違うどこかを見ていた。
子供の頃は、お人形やぬいぐるみの動物のガラスの目が、自分を向いていないとイヤだった。だから抱きかかえて自分のものにしていた。

それが今では、それを私と違うものに固定して、その視線の行き先など気にも留めないでいる。
変わっちゃったんだなァ、私も。

間もなく駅に着くというアナウンスが流れる。
ふと、私は自分の思考が気に掛かった。それはさっきのテディベアのことに対してなのかわからないけど、まるで見知らぬ誰かに「それは違う」と言われたようだった。

あの子がじゃあねといいながら席を立った。あ、うん。
軽やかな足音を目で追うと、それがプラットホームに消えた。ドアは贅沢にあんぐりと口を開けている。






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