短編

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乱暴に戸を開けると


「っ、おかえりなさいっ!!」


びっしょり濡れた俺の肩にすかさずタオルをかけて部屋へと誘導する


「凄い雨でしたね。」

俺の鈴が鳴る

俺だけに語りかける

俺が拾った

俺の命




ばんっ




いきなり押し倒すとアイツは目を丸く見開いて驚いた


俺の髪からしたたり落ちる雫がアイツに落ちてあいつも濡れていく



「晋助さん」



俺は鈴の音を聞くと


天井を仰いだ


電気が眩しい・・・と思った



何がしたかったのか、自分でもわからない・・・


アイツを抱こうとしたのか・・・でも、そんな気はなかった・・・


いったい・・・どうしたかったんだっ・・・?


雨で濡れた体が寒い


「風呂」


「入れてあります。」


立ち上がると風呂場へ向かう


上がった頃には新しい着物が綺麗にたたんで置いてありそれに袖を通す


住み慣れて来た家を歩く


そんなに広い家じゃない


それでも、ここは、ここの他はどこにはない


絶対無二の俺の家


「なぁ」


語りかける


お前と



家に



「ここを・・・引き払うぞ。」


家が寂しいと言った気がした・・・


それはきっと・・・俺が・・・



女は何も言わず


「はい。」


とだけ静かに答えた。



「お前はここに残るか?」


突然俺は言い出した


「・・・いえ、晋助さんに付いて行きます。」


「これから俺は日本相手に暴れるんだ・・・。」


「お供いたします。」


「・・・ここに残るか?」


「・・・。」


あいつはとうとう答えなくなった


何故俺はコイツを手放そうとしたのだろうか・・・


さきほどまで、来島にコイツの話しをされるだけでも嫌で・・・


絶対コイツを放す気なんてなかったのに・・・




「・・・私の命は・・・晋助さんはお拾いになったでしょ?」




あいつはもう一人で生きていける・・・



俺の拾った命で生きて行ける・・・




「ここにおいて行くと言うのなら・・・この場で私を殺してください。」



出合った頃にはもっていなかった意思のある目で睨み付ける



「あなたのいない世界で・・・生きてなんていけない・・・。」



日々変わっていくお前は・・・俺にとってなくてはならないもの・・・



「離れるなら今の内だぞ・・・。」


抱きしめて放さない


お前の命は俺のものだ・・・



「嫌です・・・離れたくないです・・・。」



「なら、着いて来い・・・・・どこまでも、その命尽きるまで・・・・」



運命だから・・・



永遠に・・・



命尽きるまで・・・・




END
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