短編

□幸せのかけら
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みんながさ、幸せになればいいのにっていつからか思わなくなっていた・・・・。






幸せのかけら




気がつけば吹き抜ける風に言葉をこぼす



「この前まで夏だったのに・・・。」



木々は紅葉を始め風には冷たさを感じる



一人で帰る帰り道に慣れてしまった今日この頃・・・


自転車で二人乗りをして帰るカップルが私の横を通り過ぎる



・・・羨ましい


「いーなぁー私も男欲しい・・・。」



呟いてから虚しくなる



また、とぼとぼと歩みを進める



去年のこの時期はなんて暖かかったのだろうか・・・



それは確かに愛し合っていたから、心が通じ合っていたからなんだろう・・・



彼と別れてしまってから・・・いっつも私の心は寂しくて寒いんだ・・・



チャリンと自転車が通る音がして道の隅を歩く


自転車は私の少し前で止まった


学ランの男子生徒が振り返る



「一人ですかい?」



「・・・うん。」


沖田だった。


何も言わず彼の後ろにまたがる


「・・・・どちらまで?」



「・・・・とりあえず・・・私ん家」


「・・・ラジャ」


と言うと彼はペダルをこぎ出す



風が冷たい


総悟の匂いがする


背中にすがると温もりを感じる


あの人もこんな感じだったなぁー・・・



「最近彼氏とはどうなんですかぃ?」


風でよく聞こえない


「なにぃ?」


少し大きめな声で聞こえなかったことをアピールする


「彼氏わぁ?」


大きめな声でもう一度言い直してくれた


・・・あれ?言ってなかったっけ?


「いないよ!!別れた!!」


「・・・。」



あれ聞こえなかったのかな?


もう一度言い直そうとすると



「いつですか?」


聞こえていたみたいだ



「卒業式の数日後・・・。」


「そうだったんですかぃ・・・。でもなんで・・・。」


「そりゃ、新しい女が欲しいからでしょ。」



私がいたら邪魔だと思ったんだろう・・・


「しょせん・・・彼にとって私は運命のお姫様じゃなかったんだよ。」



思考が乙女だと友達には散々言われたけど・・・・



結局の所、そうなんだろうな・・・



彼にとって私はただの経験でしかない・・・愛していたのは私だけだったんだ・・・


「・・・昔・・・やりましたね・・・・お姫様ごっこ。」


昔?


記憶を漁る・・・



ごっこと言うからそれなりの年齢だろう・・・幼稚園くらいか・・・?


「あぁー微妙にやった記憶があるわ;」


私も総悟も騎士役がやりたくてじゃんけんで決めてたっけ?


私がお姫様役の時はいいのだけども、総吾がお姫様をやるといつしか女王様になってたっけ(笑)


そうか、あの時から総悟はSだったんだ。


・・・じゃなくて!!


「俺のお姫様はあの頃からアンタだけなんですぜ・・・・。」



・・・・



「ねぇ・・・それってどうゆーことよ・・・。」



そんなの聞かなくてもわかってるのに・・・


総悟の心拍数が凄い早く聞こえてくるくらい脈だっている・・・


私もドキドキしてきた


総悟に触れている手から熱が伝わる


「そのまんまでさぁ。」


「・・・ふ〜ん・・・。」


ドクドクと音を立てる総悟の心拍数を聞く


背中にすがるととても落ち着いた気分になれた


周りがとても明るく見えて


みんなが笑顔な気がした


私今幸せなんだな・・・


この感じ・・・久しぶり・・・



「アンタは・・・俺と付き合う気がありますかぃ?」


目を閉じて風を感じて温もりを感じる


「・・・総悟となら・・・幸せになれるかも・・・。」


少し小さな声だったが、総吾にはちゃんと伝わったみたい・・・


「ちゃんと・・・守ってよね・・・騎士(ナイト)・・・。」






温かい温もりに幸せの風が吹き抜ける







END

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