短編

□DEATH LOVE IS DESTINY
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町が夕暮れに染まり俺の時間が来る


闇は俺の住みかだ


昨晩からの雨のせいで薄暗い雲が不気味な世界をつくる。


傘を持ち俺は出かけた






デッド・ラブ・イズ・ディスティニィー




昼間は人がうじゃうじゃといる町も


この時間帯になれば落ち着いている


まして、この雨だ。


誰だって出かけるのは怠くなる。


そんな見慣れた町の路地の縁に


びしょ濡れで泥だらけの女が膝を抱えて座っていた。


それは、まるで捨てられているかのように…。




その女は俺に気付くと一度だけ俺を見た


しかし、すぐにまたあさってを向く


まるで俺が見えないかのように





生きることが可愛そうな女…


幸せなんてこの世にないことを知っている俺だからこそ


女の絶望が読み取れる





大丈夫…


俺がお前を救ってやるよ…


すぐに楽にしてやる…


もう何も苦しむ必要のない世界に連れていってやる





俺が刀を抜き、女の首にチクっと刃先を当てる


これで少しでも嫌がるようならば殺すのをためらうところだったが……


あいつは……




笑いやがった……




涙が一筋零れ、


口元には笑みを溢し


声を殺し



やつは笑う




その予想外で不思議な光景に


俺は動けないでいた





雷が轟き


俺の思考は戻る


刀を鞘に収めた





雨は先程より強さを増している


女は下を向く


雨の寒さで唇が紫になっていて肌の色も青白かった…


持っている傘を無理矢理女に持たせると女を抱き上げた


女は目で何か用かと聞いてくる


用なんてないさ…


ただ、


あのまま、ほおっておいても死ぬだけだろうと思ったから……


ただ…なんとなくだ……。




俺の気紛れが、お前の命を拾ってみたくなっただけのことだ。
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