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□こいするかみかみっ!
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あらー、こんにちは。
いつも綱吉と遊んでくれてありがとね。

え、つっくん?

ごめんねーあの子ちょうど今出掛けたところなの。きょうくんのバイクに乗っていったところよ。

え、“きょうくんって?”?

決まってるじゃない。雲雀恭弥くんよ。
実はね、つっくんときょうくんは幼稚園からずっと一緒だったのよー。
良かったら二人の話し聞いていかない?ちょうどアルバム整理していたところなの。ランボちゃんたちも出かけてるし残ったケーキも食べちゃいましょうか!



こいするかみかみっ!



沢田綱吉(4歳)は周りの子供と比べて大分小柄だった。今でもそうだが、当時は本当に小さかったのだ。

降りたて積もりたての真っ白な雪のような純粋さに加えて、少し赤み掛かってふくふくとした頬、小柄な奈々の膝下にも届かないくらいの背丈。そして極め付けには奈々譲りのくりんとした大きな目。おまけにどじッ子と言うオプションまで兼ね添えていた綱吉は幼少時代は屈折した意味でモテていた。

愛らしい容姿の綱吉に可愛いというつもりで「女みたい」、「よわっちぃ」と笑うもの、
何もないところでぱたんと転ぶ彼に手を差し伸べるつもりで「まぬけ」と指を差すもの。
一緒に砂遊びしようと声を掛けるつもりで泥団子を投げてくるもの…

端的に言うと綱吉は非常にモテていた。
好きな子はつい苛めてしまうんです!な男の子に。
当然そんな隠れた想いに綱吉が気付けるはずもなく、当時の綱吉にとって幼稚園とは怖いものでしかなかった。


「おれきょうおやすみするー!いきたくないー!!あぁああんっ!!」

「そんなこといっちゃダメよー。皆寂しがるでしょ?」


なんてやり取りが一時はほぼ毎日繰り返されていた。
ところが、もはや一日の予定に組み込まれていたこのやりとりはある日を境にぱったりなくなった。奈々としては綱吉にようやく友達ができたのかと安心したが、代わりにその日から綱吉は毎日頬や鼻、腕や脚などにくっきりとした噛み跡をこさえて帰ってくるようになった。
当初、奈々は犬にでも噛まれたのかしら、細菌入ってないかしらと思い心配したが、犯人が分かるなりすぐにその懸念は払拭された。


「ふぇっ…えぇっ…!」

「恭弥ぁぁああ!あんた可愛い綱吉の国宝級ぷにぷにお肌に何てことしてくれてるのよぉおお?!」

「うるはい」


いつものように奈々と雲雀夫人が立ち話をしている前で堂々とその息子、恭弥(5歳)がぷるぷると震えてぐずる綱吉の頬に噛み付いていたからだ。普通なら間違いなく現行犯逮捕で怒られるところだが、不思議な思考回路をしていた奈々はその時何故か犬に噛まれたんじゃないなら大丈夫ねとあっけらかんとしていた。


「あぁっ!!綱吉大丈夫?!本当にごめんね!可哀想にこんなに噛まれちゃって…」

「うぇー…ひばりおねぇさまぁー…」

「ちょっとあなたまだつなよしにお姉さまって呼ばせてたの?もう年なんだからやめなよ。見てて恥ずかしいよ」

「おだまり!あれほど噛むなって言ってるのにどうして噛んじゃうのっ!綱吉痛いって泣いてるでしょ!」

「大丈夫。つなよしはおもちだからやわらかいし痛くないよ」

「ひにゃあああっ!」

「って、言った傍から噛むなぁぁぁ!!」


雲雀母に抱き締められてながら宥められている綱吉の手を取ってがぶりと噛み付く恭弥。じたばたと暴れて口を放してもらった頃にはくっきりとした歯形が付いていた。引っ込んでいた涙が再び溢れた。


「あぁああんっ!うぁあああんっ!」

「わぁー綱吉ごめんねっ!もう痛い痛いないからね!もう怒った!恭弥っ!!今日はハンバーグしないっ!!代わりにピーマンの肉詰めにしてやる!」

「なっ!…へぇ、ぼくを怒らせるんだ。良いどきょうだね。」

むすっとしてサランラップの芯に粘土を詰めてアルミホイルで巻いたお手製トンファーを構える。こんな可愛らしいなりだが当たるとかなり痛いのを綱吉も雲雀も知っていた。


「へぇー、きょうちゃんたらそんなことするんだ?じゃあ次のお誕生日は硬いトンファー。いらないわよねぇ?だってそのおもちゃで咬み殺せるんですもの。」

「…ちょっと。ソレはずるいんじゃないの?」

「まぁまぁきょうくんも雲雀さんも落ち着いて。お腹が空いてるなら家でお茶していきましょう?今日のおやつはガトーショコラなんだから。」

「ままっ!つっくんいちばんおっきいの!クリームもつけるの!」

「はぁいはい。つっくんのはお花にしましょうね。」

「わぁいっ!」


奈々のケーキに反応し、涙でなく喜びに瞳を輝かせ飛び跳ねる綱吉に雲雀親子は喧嘩そっちのけで見入っていたのは言うまでもない。
恭弥は頬をうっすらと染めながらも単純だとあきれ気味に、雲雀は可愛いと瞳を輝かせながら。

綱吉が幼稚園に行くのに泣かなくなった理由はまさにこれだった。最近奈々が仲良くなった雲雀の息子、恭弥に絡まれるようになった代わりに、彼を恐れる他の園児に絡まれなくなり、いじわるが減ったのだ。
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