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□≠identical
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!学生パラレル
!雲雀と風は一卵性の双子
!雲雀が酷い人








彼と同じが嫌だったはずなのに、




「わたっ、私雲雀先輩が好きなんです!私と付き合ってください!」


今月に入って5度目になる告白に私は今直面していた。
双子の弟、雲雀“恭弥”として。
これは相手が差出人を間違えたのではない。私たちが意図的に“入れ替わった”だけだ。

並盛高校に在籍する私と恭弥は同一の外見のせいか度々注目を浴びる。自分でいうのも変な話だがこういった呼び出しも軒並み頻繁に起きる。
ただ、一つ彼らの共通点を上げるとすれば、彼らは揃いも揃って私たちを一括りにして見ていることだろうか。何故なら、


「話の腰を折ってしまいすみません。ですが私は恭弥ではありませんよ。」

「え、うそっ…?!」


こうやって私が告げるまでは彼女を含め誰一人、どちらの雲雀に想いを告げているのか把握すらしていないのだから。
たまに疑問に抱く。彼女達は本当に私達を個体として好いているのかを。確かに互いに異なる理由があるとはいえ、私達はろくに授業に出なければ誰かとかかわり合いを持つことも少ない。昼休みや放課後の過ごし方は専ら恭弥との手合せだ。それでも、見分ける点は他にもあるはずなのだ。


「ご、ごめんなさいっ…私っ…!」

「気にしないでください。…ですが少し悲しいです。」


間違いだと気付いた彼女に私は声を掛けた。


「私はあなたを思っていましたから。」


彼女を傷つけるために。


「えっ…?!」


予想通り彼女は顔を赤らめて言葉に詰まる。


「折角あなたの勇気を振り絞った後にこんなこと言いたくなかったですが…恭弥でなく、私ではダメですか?」


いつものことだけれど、思ってもいない言葉に吐き気がした。だけれど、それを表に出してはいけない。
背後から足音がする。今日も始まってしまう。彼の遊びが。


「あの、私でよければ…」

「で、結局彼を選ぶのか。」

「!?」

「…ずいぶん遅かったのですね、恭弥。」


凍り付いた彼女を尻目にため息を吐いた。ここで私のお役は終わり。…と言いたいところでしたが、まだありましたか。


「君、確か僕に手紙を寄越していたよね。なのに結局風になびくんだ。」

「あ、その、わたし…」

「とんでもない女だよね。結局誰でもいいんだから。まぁ良いけどね。僕も彼も君には何の興味もないから。」

「なっ、雲雀先輩…」

「…申し訳ありませんが、彼の言っていることは本当です。私達を見分けることもできなかったあなたを好きになるのは…無理ですね。」

「っ…!」

「わかったならさっさと消えてよ。」


そう言って恭弥が冷たい視線を向けると直ぐ様彼女は泣きながら私達の前から去っていく。


「…ほんと、どいつもこいつも懲りないね。」


悪怯れもなく、むしろ面倒臭そうに恭弥は吐き捨てる。この悪趣味な戯れを考案した彼には罪悪感なんて言葉はない。


「良いじゃないですか。最近ようやく人数が減ってきたんですから。」


対する私もまた、持っていた罪悪感は次第に消えてしまい、今ではもう自己を取り巻く悲しみと虚しさくらいしか残らない。

恭弥と違い私は人付き合いや、誰かとつるむのは嫌いではない(それでも一人静かな場所を好みはするが。)ですが、私を私と見れない人間とはとうてい時間を共有する気にはなれないのです。

一卵性の双子ならば誰しも一度は持つ感情、アイデンティークライシスより少し軽いそれだった。
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