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□After DARK
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「ねぇ、山本…いる?」
「おー。しかも雲雀付きだ」
「げっ奴もいんのかよ。」
「心なしずっと視線がこっちなのなー…。」
現在8時15分。並盛中正門より約25メートル離れた塀の影にて、ツナ、山本、獄寺は風紀検査の様子を見ていた。
「最悪だぁぁあ!雲雀さん絶対気付いてるよ!二十日以上も学校来てなかったことも今オレらがここにいることも!」
もうオレ帰るーと今にも泣きだしそうなツナを山本がぽんぽんと頭を叩き宥めた。
「でも十代目ッもしかしたらノーマークかも知れませんよ!オレ達今日は時間余裕ですし!!」
「そうだって!このままぐずぐずしてっと今度は遅刻で目ぇ付けられちまうぜ?」
「う、確かにそうだけど…」
「いざとなったら走って逃げりゃあ良いんだよっ」
「そうっすよっ!10年後帰りのオレ達には今の雲雀は雑魚じゃないっすか!気にすることありませんよ!」
「お、もう20分だ。ほらツナ行こうぜ!いざとなったらオレが護ってやっから」
「なってめぇっそりゃオレん役目だ!」
「あぅあ〜地獄にどんどん近づいてるー…」
このまま居ても埒が開かないと判断した二人はツナを半ば引き摺るようにして塀から出て正門へと向かった。
未来での戦いを終え、漸く過去、自分達の本来いるべき時代に帰ってきた。家では10年後の獄寺達が何らかの機転を利かせ修業合宿に出ると伝えてくれていたため、奈々もただお帰りと笑うだけで特に何も言わなかった。
この調子なら学校も大丈夫だろうと当初は高を括っていたが、その日の夜にかかってきた学校からの連絡で希望は無残にも打ち砕かれた。
前回のヴァリアー戦同様、奈々は学校に連絡を入れてなかったのだ。ヴァリアー戦の時は雲雀も出ていたためか担任も何も言わなかったが、今回は違う。10年後の未来にいてなかなか帰れませんでしたなんて誰が信用するだろう。
「ぅあうあ〜。もうヤダー!」
「大丈夫だって!」
「と言うか十代目、そろそろお立ちになったほうが…襟伸びますよ?」
「あっうん!ごめん山本オレ歩ける。」
「おー。」
ズボンの汚れを払い、立ち上がり、前を向くと、ちょうど雲雀と目が合った。
「……。」
(…目、あっちゃった…)
にたぁり。
(?!)
真一文字だった雲雀の唇がゆったりと弧を描いた。ぞわり、と悪寒が背中全体に走った。
(ヒ、ヒバリさんすっげぇ怒ってるぅぅうう?!)
背中に般若や阿修羅がいそうな光景に思わず全力で目を逸らしたくなる衝動に駆られた。目線を雲雀に張りつけたままがちがち震えていると、雲雀の口が何かを紡いだ。
(…?む、だ、ん、けっ、せ、き…か、く、ご、し、な、よ…?)
袖の中で何かが一瞬光った。ソレが何であるかツナは超直感を使わずとも理解できた。
(あの人問答無用で咬み殺す気だぁぁああ!!)
恐怖でツナの足は竦んだ。
「…?ツナどうしたんだ?」
「顔色悪いっすよ?」
ぴたりと止まってしまったツナを不審に思い、山本獄寺は振り返った。
「ど…しよ…雲雀さん気付いてるし、怒ってる…」
「…何かあったんすか?」
ツナの怯えように、山本、獄寺は不自然に見えない程度に歩みを緩め、あたかも普通に談笑しているように振る舞い、ツナに続きを促した。
「さっき、雲雀さんの口、無断欠席覚悟しなよって、言ってた…」
「……あーらら。」
「安心して下さい十代目っ!あなたに何かあっても雲雀のヤローはこのオレが伸してやりますよ!」
「あの、たぶん獄寺君も山本も怒られるよ〜。」
「…だろーな。ならさ、こういうのはどうだ?」
「あ?」
一、二言ほど山本が何かを言った後、獄寺はに、と笑って、ツナは自身無さ気に頷いた。
「やっべもう少しで鐘鳴るぜっ!」
「わっ本当だ!」
「十代目ッ走りましょう!」
獄寺の言葉を合図に三人は一斉に正門に向かって走りだした。