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□I want your...
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お気に入りのぬいぐるみから始まって、ゲーム機、CD、珍しく自分で買った小説、初恋、挙げ句の果ては初めてできた彼女。
情けない話だが、オレ、沢田綱吉は兄でありながらほとんど全ての大事なモノを腹違いの双子の弟に取られて生きてきた。

弟といっても一つしか変わらなく、俺が家族としてこいつらに迎えられた時点で体格は見事に負けていたから、客観的に見るとどっちが上だか分からないのだが。

取られて生きてきたと言ったが、それは気に入っていたものを相手も気に入り横取りされて二度と返ってこなかったという典型的パターンではない。有無を言わさず奪った後、ほんの少し弄んで、オレの目の前でそれを壊すのだ。

一番始めに取られた熊のぬいぐるみは5分経たないうちにボロボロにされ綿があちらこちらからはみ出ていた。
それを壊した本人、恭弥は俺にはこんなもの必要ないだろと意味深な笑みを浮かべていた。
時間が飛ぶが初の彼女の時はもっとひどかった。恭弥と並び完璧な容姿をもつ骸が、俺の知らないところで彼女を口説き落とし、俺から奪った後、一晩相手をして捨てたらしい。妊娠したのにどうすれば良いのよと泣きじゃくっていた元彼女に聞いた話だ。
取られたことよりも彼女に対する仕打ちに切れた俺は骸に直接怒鳴り込み抗議した。そのとき彼はいけしゃあしゃあとモノが一丁前に何かをもつからでしょうと訳の分からないことを抜かした。そのあとに、第一君には何かをもつ必要はないでしょうとこれまた不愉快な笑みを浮かべてきた。

高校生を出ようとする今でも俺は二人の言葉を当然理解していなかった。いや、理解しようとすら思わなかったという方が正しいと思う。
そんなことを考える前に俺はもう全てを諦め、奪われる人生に身を委ねていたから。
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