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□burning lonely boy
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「し、辰伶…」
行く途中に廊下の一角で歳世に会った。
オレを待っていたのか、姿を見るなり駆け寄ってきた。
「どうかしたのか?」
「さっきはすまない…」
「気にすることはないさ。たとえどんな形であろうと引き受けた任務は確実にこなす。それが五曜星の「火傷した肌の修復ほど面倒で時間の掛かる手術はないんだぁ!!」
オレの言葉を遮ってそう叫んだ歳世は深く頭を下げて謝ったのち、ダッシュで走り去って行った。
「歳世…」
本当に逞しくなったなお前。
最初に会ったときとは大違いだ。
なんて感心交じりにそうつぶやいていたら太白の部屋に着いた。
「辰伶か。入っていいぞ。」
扉の前の気配に気付いたのか、中から声が聞こえた。
太白は鎮明と将棋をしていた。
「放火騒ぎについて詳しく聞きたいのだが…」
「歳子達に頼んだはずだが…お前に回ってきたのか。」
すまないな、とオレに向き直った太白は苦笑した。
「とんでもない。謀反者の仕業ならこの辰伶に手で葬りますし、万が一螢惑の仕業なら異母兄としてきっちり言います。」
恐らく言うというより死合いになるのだがな。
横で「美しい兄弟愛どすなー」と囃し立てている鎮明は悪いがフェードアウトさせてもらおうか。
「そうか。もし螢惑の仕業でも頭ごなしに叱るんじゃないぞ。何か理由があったかもしれんからな。(小火から大火事になられては困る)」
「はい、心得ておきます。」
すまん、多分無理だ。
「それでは、これなのだが…」
太白に朱墨の印付きの地図を手渡された。
「そこが小火の起こった場所だ。」
よく見ると、その朱墨の印の下に小さく番号が振ってある。
「この数字が起こった順番ということですね。」
「そうだ。範囲が広いせいかまだ城下町の修復は済んでいない。」
歳子歳世に任せる前からこのような調査をしていたとは…
先刻少しでもこの任務を面倒だと思ったことを反省せねば。
「かたじけない。ここまでしてくれていたら十分過ぎる位だ。後はこの辰伶が責任を持って引き受けよう。」
「そうか。」
安心したように太白が微笑った。
「それでは、任務終了次第報告に参ります。」
そうと決まれば善は急げだ。