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□burning lonely boy
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「連続小火騒ぎ?」
五曜星執務中、オレは歳子、歳世から聞きなれない言葉を耳にした。
「そーなんですよー。4,5日前からなんですけどぉ城下町から陰陽殿の近くあちこちでボヤ騒ぎが起こってるんですよー。」
「辰伶は知らなかったのか?あちこちで話になっているが…」
二人の話から察するにおそらく熒惑以外(アイツが真面目に任務に出るとは思えん)の九曜の者は全員知っているようだ。
4、5日前か…
「その辺りは室内に篭っての書類整理が多かったからな。というかそれは熒惑の仕業ではないのか?乱闘騒ぎだとかで…」
アイツがわざわざ城下町に下りてまでそんなことするとは思えない。
そうは思っているが、機嫌が頗る悪いときに「こんな詰まらないトコ全部燃やし尽くしたい、てか燃やす」と零しているのをたまに見かける。
可能性を全否定することは出来ない。
「「貴方以外に誰とするんですか。」」
悪かったな。
「それ以前に熒惑に話を聞こうにも捕まらないんだ。」
「そういえばそれも4、5日前からですねー。」
「どういうことだ?」
二人に話によると、5日前に一般眷属により熒惑の部屋が全焼しているのを見つけられるが本人の姿は無く、不審に思った太白が遊庵様の家を尋ねたところやはりそこにもおらず(しかも遊庵様は長期任務でいないと来た)、その日以来壬生の彼方此方で小火が発生するようになった、と言うことだ。
「しょうがない奴だなアイツは。任務もこんなに溜めおって…」
「「と言うわけで辰伶」」
歳子歳世がニコニコと笑いながらオレの方を見た。
長年(と言うほどでもないが)の付き合いか、オレはこいつらの次の言葉が容易に予想できた。
「「後のことはよろしくお願いしますね。」」
ほーら、予想通り。
「一応聞いてやるが何故オレなのだ。」
最大限の愛想笑いをもってして問い掛けたつもりだが、眉間に寄った皺はどうしても戻せない。
「だってー辰伶のほうが熒惑のことよく知ってるじゃないですかー。」
「それに私たちも任務に出る日が近いのだっ」
聞けば明日から2,3日樹海での任務があると言う。
お前ら普段は肌が荒れるだの言ってやってないだろう。
「というわけで、」
「犯人確保よろしくお願いしまーす!」
「なっオイ貴様らっ…」
言うが早いかで二人の姿はなくなっていた。
逃げられたか…くそぅ。
「頼んだと言われてもな…」
ついさっきまで事態を知らなかったオレがどうしろというのだ。
…しかし熒惑の仕業ならまだ良いが(いや良くはないが)もしこれが謀反を企てている輩の仕業であるなら放っておくわけには行かない。
「太白にでも聞きに行くか。」
久々に部屋から出た。
太陽の光が眼にしみた。