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□盲目姫の冒険記
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「みっ見えない…」
勢い良く水で目を濯ぎ、何度も瞬きを繰り返す。
それでも、ツナの視界は真っ白であることは変わらない。
「どうなってんだよ?!何にもみえねーよ!!」
バタバタとあちこちををぶつけながら、リボーンのいる自室に戻る。
「閃光弾の爆発を肉眼で間近で見たんだろ?ショックでしばらく見えなくなってるだけだ。」
「それってどれくらいで戻るの?!」
「光の強さが太陽並だからな。回復には時間がかかるだろうな。」
「そんな…1時からヒバリさんと約束あるのに…今何時なんだ?!」
「11時30分。」
「マジかよ?!ヒバリさんの家自転車でも15分はかかるのに、視力無しで歩くんじゃいつになるかわかんないよ!!」
「ツナ…たとえ腕を切られても眼を潰されても約束を果たすのがマフィアのボスだぞ。」
「元はと言えばお前とランボの喧嘩だろーーーー!!!」
正確にはランボが勝手にちょっかいを出して、リボーンがあしらい、怒って道具を持ち出してきただけだが。
「うるせーな。死ぬ気弾打ち込んで裸で行かせるぞ?見えなくなろうが早く目的しに着くしちょうどいいじゃねーか。」
弾を装填し、こめかみに銃を向ける。
「悪かったよ。だから銃をおろしてよ。」
「つべこべ言う暇があるならさっさと行きゃーいいじゃねーか。」
「言われなくてもそうするよ!」
そういい捨てツナはバタバタと部屋を飛び出した。
「おいツナ…」
「何だよ?!」
「その先階――――――――――
ゴロゴロゴロバッターーーーーン
「ツッ君?!」
下からママンの声が聞こえる。
きっとすごい落ち方をしたのだろう。
どんな光景なのか興味はあったがリボーンは眠気を優先した。
「本当にツッ君は〜階段から転げ落ちるなんて慌て過ぎよ〜?」
「イタッ!」
「ねえツナ…本当に行くの?」
怪しげな煙が噴出すフライパンを片手にビアンキが(表面上)心配そうに訊ねた。
「うん。折角ヒバリさんと出かけられるんだもん。こんなことぐらいで遅れたくないよ。」
「えらいわツナ。愛のために頑張りなさい。」
「もっもう行くね!!!」
いくら事情を知っていても、恥ずかしいことには変わりないので、ツナは出来るだけ急いで家を出た。
「ねえビア姉…」
「何?フゥ太」
「その雲雀って人バイク持ってるんでしょ?だったら迎えに来てもらえばいいんじゃないの?」
「フゥ太…まだ子供だから分からないかもしれないけど、これは愛の試練なのよ。だからそんなのに頼っちゃだめなの。」
これが違う状況なら説得力があるが、ビアンキはただ楽しんでいるだけだ。
その証拠に、楽しそうにフライパンのの中身を混ぜている。
「ツナ兄大丈夫かなあ…」
フゥ太の呟きと重いため息は誰の耳にも届くことなく、
ビアンキの調理音に溶け込んで消えた。
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