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□ウソツキアイ
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「オレ…ヒバリさんのことがっ…好きです!」


訳が分からない。
応接室に来るなり顔を真っ赤にして叫ぶように言った草食動物、基沢田綱吉に僕はただ一言そう思った。



ウソツキアイ



沢田綱吉。
弱くて群れる草食動物の典型的な種類。他の奴らと同じように僕と廊下ですれ違うだけでも過度に怯える。
そんな彼が僕に好きといってきた。
…は、笑わせる。
まだ僕は何も言ってないのにがたがた震えているじゃないか。好きだといったきり顔さえも上げていないじゃないか。
怖いと全身で言ってるくせに良くもまぁ「好き」だと言えたものだよね。

それに言うまでもなく僕はヘテロだ。つまり男に恋愛感情を抱くたまではない。
だからといって特別女に興味を抱いている訳でもないけれど。

まあこれは着ているものによれば男とも女とも取れる出で立ちをしているけどね。

Noと答える代わりに得物を振るってやろうかと思ったが、やめた。どうせ退屈に変わりはないし暇つぶしがてら彼と俗に言う“恋人ごっこ”をしてやろうかと思った。
男だけどごつくはないし、寧ろ小さいし、何より彼に群れる奴らはそれなりに暇つぶしには魅力的なものが多い。都合の良い事に連中は皆彼に好意を抱き慕っている。
そんな彼に手を出してやればきっと黙ってないだろうね。挙げ句そんな彼が僕に弄ばれて捨てられたなんて聞いたら尚更だ。連中の怒り狂って向かってくる様を想像したらゾクゾクと戦闘本能が疼いた。


「あ、あの…ヒバリさん…?」

「…何」


あぁ、そういえばいたのか。彼の告白からずっと黙りを決め込んでいた僕を不思議に思ったのか沢田は怖ず怖ずと僕の名前を呼んだ。


「あの、…最初から引かれるのは分かってたので、無理なら遠慮しないで殴ってくれたら…」


あぁ、本当笑える。
無理なら殴ってくれてもいい言ってる割りには可哀相なくらい震えてる。見ていて愉快だけど…やっぱり幾分不快だ。


「…悪かったね。そんなつもりじゃなかったんだ。」


そんな内心を綺麗に隠して自分でも驚くほどの優しい声音で返した。男の割に柔らかい頬を撫でてやると面白いくらいに反応した。


「うぇ、ヒバリ…さん?」

「好きって言ってくれたけど君は僕にどうしてほしいの?」


そう問うと沢田は半ば狼狽えた感じで答えた。


「え、あの、その…実は考えてなかったんです…。断られることしか考えてなかったんで…」

「心外だね。僕はコレでも結構君のこと気に入ってるのに。」


にしても頬柔らかいな、この子。白いし。


「ふわ!あ、え?!」

「まあ良いや。それなら僕と恋人として付き合おうか?沢田綱吉。」

「…は、はい…よろしくお願いします…」


沸騰寸前まで真っ赤になってうつむく様はとても可愛らしく、滑稽だった。
せいぜい僕を楽しませてよ、草食動物。
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