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□I am His Best Friend
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!綱吉の悲恋
!雲雀と綱吉幼馴染設定





小学校五年の時、オレはヒバリさんの初めての友達になった。

「きみ、だれ」
「さ、さわだつなよし、5年生です!」
「ふうん」

ヒバリさんはその時からトンファーを振り回して皆に怖がられていたけれど、その時はまだ弱いものが嫌いって訳ではなかったのだ。ウサギ小屋の前で血まみれになってたたずんでいた時も、ほんの少し警戒したそぶりを見せただけで襲ってくることはなかった。

「あの、どうしてけんかしたんですか?」
「こいつらがウサギをいじめたからだよ。もうすぐで子どもが生まれるのに」

足元で転がっている子たちを無造作に隅っこに引きずりながらウサギ小屋を指差す。いつもけんかしていて怖いと周りの皆は言っていたけれど、けんかの理由なんてそんなものだった。ちょっとばかりダイナミックにぼろ勝ちしてしまうだけで、いつも苦しんいでる何かを守るためにけんかに乗り出す、そんな人だった。
喧嘩を制して返り血でドロドロだったヒバリさんにあわてていつも持っている手提げからタオルを取り出して差し出した。

「なに、これ」
「タオル。今日おトイレ行ってないからまだつかってないよ」
「そうじゃなくて」
「うさちゃん怖がっちゃうよ?」

怪訝そうな顔をして自分の方を見るが、気にすることなくオレは持っているタオルを彼の方に差し出す。彼が受け取るまでその手を下げるつもりはなかった。彼はうさちゃんを守るためにけんかをしていた。つまり彼は怖くない。そんな単純な思考でオレはヒバリさんに対する恐れをあっさりなかったことにしていた。

「…君は変わっているね」

暫くしてぎこちない笑顔で受け取ってくれた時、オレは直感でこの人と一緒にいたいと思うようになった。それがどういう意味だったのかはそのときはよくわかっていなかったけれど。


その次の日、オレはその気持ちの赴くままにヒバリさんを探した。お昼休みに、こんにちは、おにいさんいますか?と彼がいるだろうクラスを手当たり次第覗きこんだ。クラスの中から皆変な顔をしていたけれど気にとめることはなかった。
三つ目のクラスで同じことを言った時、ヒバリさんと目があった。オレに気付いたヒバリさんは最初のうちはどうしようって困った顔をしていただけだったけれど、やがて引き返す様子がないと分かったのかしぶしぶといった様子で出てきてくれた。

「僕は君のお兄さんじゃないよ」

開口一番、彼は呆れたように言った。その時初めてオレはヒバリさんの名前の読み方を教えてもらった。学校の決まりをきちんと守る彼は毎日胸に名札を付けていたけど、その時のオレには「雲雀」なんて読めなかったのだ。
無事にクラスと名前が分かって以来オレは毎日毎日、ヒバリさんに会いに行った。
こんにちは、ヒバリさんのクラスに行って挨拶する度に当然彼は、「今日は何しに来たの?」「君は自分のクラスに友達はいないの?」不思議そうな顔をしてそう聞いてきた。それでも彼はオレを追い払うことはなかった。もしかしたら会っても黙って横で座っているだけだったからこれと言って気にとめていなかったのかもしれない。
取り立てて何か話すわけでもなくヒバリさんのそばに居続けたら少しずつ彼の方が変わった。ヒバリさんに会う前に盛大に転んでわんわん泣いていたら黙って頭を撫でてくれたし、怖い夢を見て眠れなかったってぐずったら今ここで寝ればいいじゃないとオレを引き倒して頭を自分の膝に押しつけた。
追い払わないだけで、オレを歓迎することはなかったけれど、優しいことなんて一言も言わなかったけれど、面白いことがあってもあまり笑わなかったけれど、それでもオレはヒバリ優しいことを知っていて、そんなヒバリさんが大好きで、大好きで、オレはひな鳥みたいに暇さえあればヒバリさんを探して隣にお邪魔するようになっていた。

そんな風にしていたらオレが風邪でお休みした時にはヒバリさんが「今日は退屈だったよ」って四つ葉のクローバーを片手にお見舞いに来てくれた。その時の四つ葉は今でも机の引き出しに入っている。
それ以来これと言った約束をしなくても学校が終わったら一緒に帰るようになって、いつしか、ヒバリさんが小学校を卒業するころには一緒にいるのが当たり前になっていた。
それは、離れ離れになっていた一年間も変わることはなくて。学校が違うなら放課後に遊ぼう。放課後会えないなら休みの日に遊ぼう。そうやって回数は減っていたものの暇があれば会っていた。
遊ぼうって言って会っていたけれどやっていることは相変わらず小学生の時と変わらなかった。放課後に会った時は公園のブランコをただキコキコならしながら沈んで行く夕陽を眺めて、休みの日に会った時はお昼ご飯やおやつを一緒に食べたあと、宿題の手伝いをしてもらって、ヒバリさんがたくさんの紙とにらめっこする様をぼんやりと見ていた、それだけだった。
中学生は忙しいんだよ、会う頻度が三日に一度になって、少ない時は一週間に一度、一か月に一度になったこともあったけど、やっぱり一緒にいてすることはなにも変わらなかった。

会わなかった一年の間にヒバリさんは並盛最強の不良風紀委員長、雲雀恭弥になっていた。彼の周りにはたくさんの学ランを来た強面のリーゼントの男の人がいる。先生も生徒も彼を恐れて怒らせないようにしているらしい。
それでもヒバリさんのやっていることは小学生の時とあまり変わっていなかった。ルールを破る人にお仕置きして、迷惑をかける集団を殴って撤退させて、弱い者いじめされている人は助けていた。もっとも弱い者いじめに関しては、本人は群れの中にたまたま弱い草食動物がいただけだと言っていたけれど。
すくなくとも、ヒバリさんがやっていることは悪いこと、酷いことじゃない、そう思ったオレは特に彼を怖いと思うことなく、中学生になった後もヒバリさんの後ろをちょこちょこついて回っていた。
ようやくクラスでできた新しい友達、山本、そして獄寺くんはそんなオレを見て不思議そうな顔をしていたけれど、小学生からずっとくっついてたからと言えば納得したようだった。

小学生の時と違って「群れる奴は咬み殺す」「草食動物は嫌い」って言葉が口癖になっていたけれど、それでもオレはいつも応接室で一緒にご飯を食べて、ヒバリさんの言う「見回り」をしながらいつも一緒に帰っていた。
周りのみんなにとってヒバリさんは恐怖の風紀委員長だけど、オレにとってヒバリさんは変わらず大好きな友達で、そして優しい先輩だった。頭をなでられたら幸せになって、眠いからと膝を枕にされた時は痺れてプルプルしたけどそれでも嬉しいと思った。時々良いことがあった時は思わずぎゅーっと抱きついて、広い胸元に頬をすりつけて喜んだけれど、ヒバリさんは嫌な顔一つせずに「相変わらず甘えん坊だね」と笑っていた。

中学生と言えば思春期の始まりで、保健の授業が終わる度に周りの男子が彼女とキスした、こんな女の子とエッチしたいなんて言うようになってきて、そんな中何故かオレはちゅうする相手にヒバリさんを想像していた。どうしてだろうなんて考えていたらその日の夜、ヒバリさんと何度もちゅうする夢を見て下着の中を白いぬるぬるで汚した。どくんどくん。夢の内容を思い出すたびに夢から覚めても収まらない鼓動を服の上から胸を押さえて落ち着かせて、ようやくオレは理解した。

オレはヒバリさんに恋をしているのだと。
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