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□pervard from the past
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!アラウディさんがとんでもない変態


「それではお気を付けて十代目!」
「うん、またね!獄寺君!」

考えてみたらこの日綱吉はラッキー過ぎたのかもしれない。
朝は京子からの連絡網ですがすがしく目が覚めて気分が高調し、、
数学の時間に帰って来たテストは平均−僅か5のツナにしては快挙を成し遂げ、
今日に予定されていた社会の補習も担当教師の諸事情により次の日に持ち越され、
何のトラブルもなく獄寺と帰り道で別れ、
そして学校帰りに奈々からのお使いを済ませるべく商店街に行くといつも奈々が話し込む肉屋の女将に自慢のジャンボソーセージでフランクフルトをご馳走してもらい、今に至たるのだ。
それはもう、全てがうまくいき過ぎているくらいに今日の綱吉はダメツナでなくラッキーツナだったのだ。

だから、

「…え、」

何の予告もなく物陰に引きずり込まれ、壁に押しつけられ、口に布を押し込められ後ろから知らない手に身体をまさぐられてしまっても、あまりにも突然の出来事で悲鳴を忘れて茫然とするしかなかったのだ。



pervert from the past



(えーっと、これって痴漢…?)

悲鳴を上げ忘れたせいか数秒遅れで状況を察した綱吉はいつになく冷静だった。普段あれだけ命の危険にさらされていれば平常時でも多少のトラブルに対してなら耐性はつくものだ。
男に手を出すなんて運が悪いというか、物好きというか…ごそごそと背後から弄る手にどうしようかと綱吉は頭を悩ませる。
口に布が入っている以上死ぬ気丸を飲むことはできない。と言うか一般人相手になんて物騒なとつい自分自身に突っ込みを入れた。

(取り敢えず、足を踏むくらいは…)

背後の気配はまだ綱吉の思惑に気付いていないはずだ。なるべく一撃で怯ませるために爪先を狙って綱吉はそろりと片足を上げると、

「んぐっ!」

かくん、と無防備な膝裏に軽い衝撃を浮け綱吉の体は呆気なくバランスを崩し崩れ落ちた。
虚を突かれたその隙に背後の手はするりと綱吉の服の間に入り込む。もう片方の手はジッパーを下ろしているのかすぐ下から鈍く金属が擦れる音が聞こえる。

「ぁ、ひ…!」

かさつき一つない指先がつつつと素肌をなぞる。その感触に綱吉の体はびくりとはねた。
今明らかに不意打ちで足を狙ったはずだ。
背後の影も、こちらの様子に気づいた様子はなかったはずだ。
被害者である自分は少し震えながらなすがままになっているのだから、まさか攻撃を受けるとは思わなかったはずだ。
それなのに、相手は正確に綱吉の行動を読み、かつ、先手を打たれ、それを封じられてしまった。
そして、まるでそこに切り札があるかと分かっているかのように背後の男の手はスラックスのポケットに伸びる。そこからするりと死ぬ気丸とグローブを抜き取られてしまい、今度こそ綱吉の恐怖は頂点に達した。本気で危ないと思ったら突き飛ばしてハンカチを吐き出して、死ぬ気になって逃げようと思ったのだ。
それさえもあらかじめ封じられてしまうとなると、そもそも綱吉の力の源を正確に把握している以上ただの一般人ではない。
変に抵抗したら本気で殺される。ようやく事態の深刻さに気付いた綱吉は今までどうにかたもっていた余裕も吹き飛び恐慌状態に陥った。

いやだ、やめて。
んーんーとくぐもった叫び声をあげながら必死に体をよじる。だが自分よりも体格のいい影はそんな抵抗さえもあっさりとねじ伏せてしまう。いつ銃やナイフが出てくるのかわからないのだ。そんな物騒なものを出されて脅されてしまったらもう確実に逃げられなくなる。
がたがたと震え、冷や汗を流す綱吉に背後の男がため息をつき、

「怖がらないで。デーチモ」

初めてその声を聞かせた。

「あ、…ぅ…?」

知った人物よりも少し低いその声はほんの少しだけ綱吉の心を落ちつかせた。
拘束が弛み綱吉はゆっくりと振り返る。そこには涼しい顔をしながらも僅かに息を乱したアラウディがいた。どうして?どうなってるの?と視線で訴える綱吉にアラウディは苦笑交じりについ、と頬をなでで、綱吉をなだめる。

「ちょっと悪いけどお願いがあるんだ。デーチモ。お尻触らせて」
「…ふぇ?」
「あぁ、ごめん。やっぱりお尻だけじゃダメだ。その白くてすべすべな身体も、下着の中のその可愛いものも触っちゃだめ?」

うっとりと息を荒げながらとんでもないことを言って来るアラウディに綱吉は固まった。
綱吉のイメージのアラウディはヒバリよりもさらに大人で、プラチナブロンドの髪と綺麗な青い瞳がクールさに拍車を掛けているカッコいい人だなぁと綺麗な認識を持っていたのにそれがガラガラと音を立てて崩れていくのを感じた。

「んー!!んんーーーー!!!」

なんかこの人やばい。綱吉の中で大きすぎる警鐘がなる。だが、今更全力で暴れても声が出せないうえに抑え込まれてしまってるためどうにもならない。アラウディも抵抗してくれるの?凄いそそるよとただやる気をますばかりだ。大体物凄く切羽詰まった表情をしてお願いしているはずなのに、抵抗を許さないこのホールドっぷりがまずおかしいのではないか。いやいやと暴れてもその抵抗は微弱にすらならずそのあいだにもアラウディのよからぬ意志を持つ手は綱吉の下着中に侵入していきなりの緊急事態になえたままのモノを触りだす始末。

「ひぃ!」
「あぁ…思った通り可愛い。待っててね、、すぐ気持ちよくしてあげるから」
「んんん!!!んぐぅう!!!」
「え、痴漢は犯罪だって?僕が正義だからいいんだよ」

よくねぇ!何一つよくねぇよ!
そんなことを言っている間に否応なく反応してきている残念な息子に綱吉はいろんな意味で涙目だ。
いくら相手が一応の知り合いとはいえ野外でセクハラされて達してしまうなんて…

「んぅうううううううう!!!」

絶対嫌―と声高々に叫びたくても口の中の布がそうさせない。あぁ、もう折角今日はいい日だったのにと半ばあきらめたその時、

「!」

ぎしん、と綱吉の服をむこうとしていた手に手錠がはまり、アラウディは後ろを振り返った。

「んん!!」
「ちょっと、大の大人がいたいけな子供に何やってるのさ。咬み殺して逮捕するよ」
「ちっ。邪魔が入った。まだまだガキだから加減してしまったけど…やっぱり縛りが甘かったか」
「やめてよ。折角強い人間だと思ってそれなりに好感を持っていたのに…。貴方の緊縛癖に僕も草壁もドン引きだよ」
「椅子の上でM字開脚はお気に召さなかったかい?」
「本気で言ってるなら今すぐ咬み殺して同じ恰好させてやる」
「いらない」

折角デーチモで遊ぼうと思ったのに。お前のせいで萎えた。
ため息交じりにあっさりと綱吉からのいたアラウディはため息交じりに片手で雲雀の掛けた手錠をへし折るとさっさと踵を返して、その場を立ち去った。続きはまた今度ね、と綱吉に不吉な言葉を残して。

「…雲雀さん…!ありがとうございます…!」
「…なんだ、君だったの。小さな子供に手を出すなんてって思ったから来たのに」
「ぅ…。でもオレだって抵抗はしたんですよ…」
「まぁ良いけど。早く立ちなよ。服くらい自分で切れるでしょ。破られたわけでもないんだから」
「っはい…!」

ぶっきらぼうに学ランを投げつけてその場を去る雲雀に綱吉は嬉しそうに顔を綻ばせ追いかける。見回りが終わったら送るからそれまで待ってなと言われて綱吉ははいっと素直に返事を返した。その日はどうにか後ろを離れて歩くヒバリのおかげで何事も起こらずに家に帰ることができたが、綱吉の苦悩は始まりでしかなかった。
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