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□雲空でアラツナ親子とジョヒバ親子の部屋
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アラツナ親子の朝

「ツナ、綱吉。そろそろ起きな」
「んー…」

生返事しかない。ベッドの中の大きな山がもぞりと小さく動いた。ただそれだけだ。
アラウディの厳しい教育の甲斐あってか、頭の出来がちょっと悪いだけで素直で聞いわけのいい子に育った綱吉だが、朝のこの時間だけアラウディに反抗的だ。目覚ましが無くても日差しですっきりと目覚めるアラウディと違い、綱吉は目覚ましがどれだけけたたましく鳴り響いても起きる気配がない。アラウディが肩を揺さぶっても叩いても目覚める気配がない。

「綱吉」

べりっと布団を剥がす。肌寒いのか小さく丸まった。大分昔に飼ったペットの仔ライオンを代わりと言わんばかりにお腹の中に抱いている。

「ツナ」

ジャッと勢いよくカーテンを開けて朝の陽ざしを部屋に取り込む。7時代の徐々に明るさを増してきた朝日が綱吉の顔に容赦なく降り注ぐ。まぶし過ぎたのか、眉間にきゅっと皺を寄せてをライオンのナッツ顔の上に置いた。どうやら直射日光の身代わりの様だ。
取りあえず体よく日よけにされているナッツは没収した。持ち上げた瞬間にぱちっと目をさましがう?と鳴き声を上げた。こちらは飼い主と違って随分と優秀だ。完全に起きたナッツを床におろし、未だベッドの上で丸まっているツナを横目に見る。
7時から起こし始めてそろそ20分。隣人の子、綱吉の学校の怖い風紀委員長とやらの御咎めを回避するには遅くても30分には目覚めないと間に合わない。アラウディ自身、小さな動物が布団の上でもぞもぞ動くさまはひとしきり楽しんだ。そろそろ心を鬼にして本気を出さないと。

「綱吉…」

顔にかかった髪を指先で払い、くすぐったそうにする綱吉に笑みを零し。そのままおもむろに綱吉が寝ころぶべ度のマットレスを両手で掴んだ。

「いい加減に起きなさい」

どざっ。勢いよくマットレスを持ち上げてやると、綱吉がベッドから勢いよく滑り落ちた。ぎゃんっ!と鳴き声まで小動物のような悲鳴を上げながら顔面を床に打ち付けた綱吉に止めと言わんばかりにマットレスを重しに落とす。

「お父さんごめんなさい!ちゃんと起きます!だから助けてー!」

マットに押しつぶされてくぐもった悲鳴を上げる綱吉にアラウディは嘆息した。ここまでしないと目覚めない息子も中々いないだろう。


「お父さんご飯どれくらい食べますか?」
「お前を起こすのに体力持って行かれたからね。8分目」
「ご、ごめんなさい…」

目さえ覚ませば綱吉のスイッチは入るのが早い。どうにかマットの下敷きから這い出た先には仁王立ちした怖い父親が立っているのだ。流石にここで寝ぼけられるほど綱吉は強かではない。ベッドから出て5分で顔を洗い歯を磨き制服に着替え。アラウディが冷めた朝食を温め直したころには綱吉は朝食の準備の手伝いに台所へと入ってきていた。
ぽむぽむと二人分のご飯をよそい食卓に並べた綱吉にありがと、とアラウディが頭をなでると綱吉はえへへと照れくさそうに笑い零しそうな勢いで納豆をかき混ぜた。言うことを聞かない時は多少手荒な躾をしてしまうけれど、褒めたら年相応に嬉しがるのだからたまらない。素直に育ってくれてただ感謝するばかりだ。
混ぜすぎて若干泡立った納豆を糸を引きながらも食べていく綱吉にアラウディは思わず笑みをこぼした。

「綱吉、お前そろそろ一人で起きる習慣をつけた方がいいよ。雲雀恭弥だっけ…?彼の御咎めとやらは相当怖いんでしょ?」
「う…分ってるんですけどやっぱり朝すっごく眠たくって…」
「もう少し早く寝なよ」
「日付変わる前には寝てるんですけど…」
「…僕じゃ起きられないようなら雲雀に朝迎えに来てもらうかい?この前話したけど彼、満更でもなさそうだったよ?」

というか生き生きとしてどうやって起こしにいくか考えてた。
何気なくそう提案してみると綱吉は持っている御茶碗をぶん投げそうな勢いで首を振って拒否する。
怒っているわけでもないのに涙目だ。というか今にも泣きそうだ。それほどまでに雲雀恭弥とやらが怖いのか。

「ごめんなさいお父さん、オレ、起こされるなら父さんが良いです…!」
「分かった分かった分かったから。泣くな。味噌汁零れる」
「だって、怖いんです。ヒバリさん。オレたまにお昼休みの屋上や、放課後教の室で寝ちゃうんですけど、起きたらヒバリさんがいるんです、ヒバリさんがオレの上にいるんですっ。服も半分くらい脱げてるんです…!」
「君それ襲われる寸前じゃないの」
「オレなんかヒバリさんのブラックリストに入ってるみたいで…!ただでさえ学校で居眠りするから咬み殺そうと狙ってるのに…!寝坊だってばれたら殺されちゃう!」

だからお願いです。ヒバリさんには言わないでください。
必死の形相でアラウディに頼み込む綱吉はおそらく雲雀がどういう意味で綱吉を狙っているのか理解していない。
心底物理的な意味での咬み殺しを恐れる息子は鈍いというか、疎いと言うかそれとも呑気とでもいうのか…。
「僕の子のはずなのに、おかしいよね」
この無防備さは誰からとってきたんだろうね。ペットのナッツに問いかけても当然帰ってくる返事はなかった。
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