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□キス恋?!
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「つーかっ!逃げるってもどうすればいいんだよー!」
走りながらツナは思った。
そもそも自分と雲雀の運動能力などの差は、天と地以上に開いている。普通に逃げるのではすぐに捕まってしまうのがオチだ。
「あ、チャイム鳴った…?!」
移動教室の後の為、いつもよりもはやく人ごみが出来上がった。
「…もしかしたら…この間に逃げられるかも…!」
いくら雲雀が出てきても人ごみが割れるまでにどこかに隠れる時間ぐらいは取れるはずだ。
意を決してツナは溢れる人ごみへ突っ込んでいった。
「げっダメツナお前何でヒバリさんのトンファー持ってんだよ!?」
「手放せないんだよ!手首に繋がってるから!!」
その男子生徒の一声が瞬間、スイッチになった。
わぁお、一日モーセですか?!
ツナとトンファーを見た途端左右に割れる人込み。更に運が悪いことに、100メートル先に雲雀が見える。
「何コレ!虎の威を借る狐?!こんなところで発揮しないでよ!!」
雲雀の姿を見たものならば、今自分が命知らずにも雲雀のトンファーを持って逃げ回っていると思われてもおかしくは無い。
騒ぎが大きくならないうちに、全力Uターンダッシュでその場を離れた。
雲雀のスピードはほぼ一定だ。おそらく歩いているのだろう。
「なのに何で見失わないんだよぉぉ!!」
trrrr...
「やべっ携帯つけっぱだっ!」
近くの空き教室に身を隠し、通話ボタンを押した。
「もしもし?」
「―ツナッ!まだ無事みてーだな」
「山本ッ!てかヒバリさん歩いててもオレを見失わないんだよっ!!絶対無理!!オレすぐに捕まるよぉぉおお!」
「―大丈夫だってあと30分くらいでヒバリ元に戻るらしいし」
「嘘ォっ!30分もあるの?!長すぎッ!」
「―落ち着いてください十代目!」
「ご、獄寺君…?」
「―十代目は確か死ぬ気丸を所持しているはずだとリボーンさんが言ってましたソレを使えばヒバリのヤローから逃げ切れるかも知れません!!」
「げっオレ今カバン持ってな…あっ」
「―十代目?」
「ポケットに、…2錠だけ入ってる…!」
きっと何かの弾みで零れ落ちたのだろう。
「―それでヒバリを撒いてくださいっ」
「うん…!やってみるよ!それじゃあ、また後でね。」
鳴り響く通話終了の電子音がやけに大きく聞こえた。
「…もしかして、待っていてくれたんですか?」
振り返ると教室の入り口に雲雀が立っていた。
「君が僕に捕まることに変わりはないしね。」
余裕綽々の笑みにツナは苦笑した。
「…そうですか。でも、ごめんなさい。やっぱりオレはあなたとキス、できないです…。」
あなたのこと、多分好きなんだと思います。キスだって、してもいいかなと思います。
でも、今のあなたは嫌なんです。
他の人と同じなんだって思わずにはいられなくなるから。
時間が過ぎたら夢になってしまうキスなんて、
「だから、オレは全力で逃げます。」
絶対に嫌です。
死ぬ気丸を2粒口に含み、飲み込んだ。運悪く手袋は置いてきて無いが、コレでスピードと身体能力は並んだはずだ。
窓枠に飛び乗り、そのまま校庭へ飛び降りた。
「逃がさないよ。」
ツナと同じく本気になった雲雀も後を追って窓から飛び降りた。