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□cos i'm a human
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(…。)


ところで、オレは現在進行形でヒマです。動ける範囲は限られてるし(雲雀さんの上だけ。オレは今この人の抱き枕だから)、雲雀さんはまだ深い眠りの中。
退屈とは何とも恐ろしいもので、オレの中に妙な悪戯心が芽生えた。
どうして雲雀さんはオレを噛みたがるのか、オレが実際に噛んでその気持ちを理解してみましょうじゃないですか、一言で言うならそんな趣旨のモノ。


(しつれーしまーす。)


無意味だと分かり切っているが、心の中で一声掛けて、とりあえず今にも口を塞いできそうな腕を一舐め。

……うん、皮膚の味。としか言い様が無い。まあ、実際にイチゴ味がしましたーなんて事になったら堪ったのじゃ無いが。ちなみに雲雀さんはまだ起きる気配は無い。ばれた時が少し恐いが、好奇心が勝った模様。決死の覚悟で今度は軽く噛み付いた。


「…。」

(…。)


起きません。案外オレは単純なもので、これを切っ掛けにオレはほんの少し調子に乗った。かじかじ、かぷりと腕を噛んで遊んでみたのだ。


「ん……。」


一瞬反応したけどまだ起きない。確かに、こういう時の暇潰しなら案外楽しいかもしれない。どの辺りで起きるかなって色々試せるから、なんちゃって。
今度はぐるりと寝返って体勢を変えてみた。男のオレから見ても綺麗な首元や鎖骨やら…。きっとオレのより遥かに綺麗だと思う。うん、完敗。


(流石にここはばれるなかぁ…)


また少し躊躇いが生まれた。なんせオレかなりの小心者だ。
リボーンやら、獄寺君やらその他もろもろの個性ありすぎる集団の中で過ごして来たお陰か、多少の不満なら突っ込みの形で表すことが出来る。けれど、そんなものとこれは比べ物にならない。
相手はあの雲雀さんだから。


とくん、とくん…


動かずにうんうん悩んでいたら再び心地いいあの音がした。
あぁ、やっばり落ち着くなぁ、心音。結構癖になっちゃいそう…じゃ、無くて。大切なのは一歩踏み出すか踏み留まるかなわけで…さて、どうしようか。


カチ、カチ、カチ…


静寂に包まれた部屋に時計の音だけがこだまする。待ってても埒が開かないし、なにより今を逃したら当分はこんなチャンスに巡り合えないかもしれない。
そろそろ覚悟を決めようか。そろりと口を開けて、鎖骨のちょうど真上に照準を合わせた。

カプ…


「や、ちゃっ…たぁ…」


強すぎたのか、皮膚が薄かったのか、雲雀さんが普段やるほどではないが、口を当てたところには、くっきりと歯形がついていた。


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