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□I want your...
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「ん…」


数えきれないほどの絶頂を迎え、次に俺が目を覚ました時には既に朝日が昇っていた。


「痛…」


起き上がると腰に鈍い痛みが走った。もっとも散々抵抗したため縛られたり殴られたりしたため痛いのは腰だけではないのだが。
両手首には細く赤い跡が、首元には鬱血の跡、キスマークがぐるっと、まるで首輪みたいにつけられている。

全裸かと思ったら大きめのシャツを一枚だけ着ていた。風邪を引かないため、との親切なのか、シャツ一枚というのがあいつらの趣味なのかは俺には分からないし、わかってやろうとも思わない。

布団から出て立ち上がると同時にボタボタと何かが足の間から落ちた。


「…うわ。」


思わず眉間に皺がよった。
何がとは言うまでもなく、これが昨夜の二人の欲の残沫なんだろう。自分も同じ男であるため同じモノをもっているがここまでそれを気持ち悪いと思った事はない。


「…お腹空いた。」


二人の姿はない。俺は昨日で高校を卒業したが二人はきっとまだ授業があるのだろう。おそらく昼までは帰ってこない。
今のうちに抜け出してやれ。そう思い部屋を出ようとするが、出られない。足に違和感を感じ視線を移すと、右足首に足枷がついてあった。ベッドとつながれているそれは、部屋をぐるっと回るには十分だが、部屋から出るには少し短い。扉をくぐる事ができない。


「あっは…確かに、出れない。」


監禁先は最低限のものしか置いていない自分の部屋だ。
風呂やご飯はどうするんだと思ったら、視界にお盆に乗せられた朝食があった。
和食だからおそらく恭弥が作ったものなんだろう。まるで餌付けされてるみたいな感じに腹が立ち、食べずに餓死してやろうかとも思ったが、やめた。死体すらも何かに使われたらたまったものじゃない。それこそ、死んでも死に切れない、だ。

食事をベッドの上まで運んで窓から外をみながら食べた。
俺はあまりにも無力だから自力でここから出る事はない。もしこの部屋から出る時があるならば、それはあいつらが俺を捨てるとき。奪うだけ奪ってあっさり壊してしまう奴らだ。俺が取られていったモノと同じ末路を歩むのはそう遠くない未来のかも知れない。  

「…っふっあははっ…」


急に笑いが止まらなくなった。気が狂ったわけではない。俺は至って正気だ。


「上等だよ…」   


そっちがその気ならこっちもね。『捕まらないようにうまく逃げて、攻略し、謀略する。』誰かがそれが獲物ができる唯一の捕食者をとらえる手段だと言っていた気がする。あいにく俺にはそんな器用なことできないけれど、心を殺してあいつらの玩具を演じることぐらいは出来るかもしれない。

精々見せ掛けの俺を手に入れて喜べばいい。キスや体を許しても、行為中に強請って途切れ途切れに名前を呼んでも、それは、ただの見せ掛け。
俺の心は絶対にあげない。再び凍てついた心に鎖を巻いて、箱に入れて鍵を掛けよう、水中にでも沈めればもう完璧だ。きっと二度と誰も開くことはない。


I never belong to anybody else.


だって俺の心は俺のモノだから。一つぐらい守っても許されるよね?


end.
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