Text

□burning lonely boy
9ページ/10ページ

その熒惑が何故オレの真横にいるのだ。
なぜ密着して寝ているのだ。
不整脈を起こした心臓が喧しい。
このまま鳴り止まなかったら、恐らく熒惑よりも遥かに早く生涯を終えそうだ。
…不老長寿の壬生一族には定められた心拍数が寿命だという事実は一切影響しなさそうだがな。

もう熒惑の身体からは炎は出ていない。
寧ろ、体温が異常に低くさえ感じる。
顔に血が昇って熱く感じる今のオレには丁度いいかもしれない。

自分でも笑ってしまうぐらいのぎこちない動作で、熒惑を更に引き寄せた。
…起きる気配はない。


「……あった、かい…」


小さく、舌っ足らずな声で、そう呟いたかと思ったら、更に擦り寄ってきた。
きっと目を覚ますとすぐにオレを突き放し(寧ろ突き飛ばし)不機嫌で、冷たい視線を向けるのだろう。

誰も近付けない焔のように熱く冷たい視線を。


「それでもいいか。」


素直なことに越したことはないが、コイツの場合はどうしても違和感がある。
皮肉を込めれば不気味なのだ。
素直じゃなかろうと、捻くれていようと何だろうと、オレはコイツの何の形にも当てはまらないところに惹かれているのだろうから。


「ゆっくり休め。たまには、な。」


ヘタレた理性を総動員した本能で押さえ込み、額に一つ口付けを落とした。


fin
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ