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□burning lonely boy
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アレからどれだけ寝たんだろ…
目を覚ましたら辺りは完全に真っ暗になっていた。
二度目の覚醒は思ったよりも、すっきり出来た。


「今…何時?」


オレの質問に答えた人はいない。
代わりにすぐ近くでオレ以外の奴の寝息が聞こえた。
誰かがオレの手を掴んで眠っている。

少し身体を起こして見ると、辰伶が寝台背を預けて眠っているのが見えた。
ご丁寧にオレの足元まで移動して、それでも、手だけはちょっと引っ張ったぐらいじゃ取れないぐらい強く握ってる。


「…バカじゃないの。」


疑問でなく、断定で。
手を繋ぐぐらいなら、オレのすぐ近くでいいじゃん。
わざわざ、無駄に無理な体勢をとってさ。起きたら絶対首が寝違えてるよ。
起き上がったことでずれた額の布が、手の上に落ちた。
まだ冷たい。きっとこいつが眠ったのはほんの数分前。

隙間風に身体が少しぞくりと粟立った。
少し、いやかなり寒いと今更ながら自覚した。
さっきまでは身体が燃えるように熱い(実際に燃えてたし)
ソレに対し、今の状態は凍えるように寒い。
もし、オレの周りが凍ったら、オレは炎と凍り使いになるんだ。
……コレなら辰伶に勝てるかも、なんて。

意味もなく、辰伶の手の甲を抓った。
…起きる気配はない。

寒い。身体の体温がどんどん下がっている気がする。
近くにいる暖かそうなものは、一つだけ。
それなら――……


「………あったかい。」


布団まで引き摺るにはちょっと身体がだるかったから、オレが辰伶のすぐ隣に移動した。
コレでもかって程身体をくっつけて、布団を一緒に被ったら、うん、あったかい。
普段暑苦しいだけあってコイツの平熱は中々高いらしい。


「コレは毛布。でっかい青い毛布…」


ヘタレで、揚げ足取りで、意地悪で、単純な造りなようで良く分からないこの漢にもう一つ、オレがこうする理由をやるなら――さっきのキスの仕返にでもしておこうか。


精々赤面してうろたえればいい ってね。


   ■□■□


「……どうなってるんだ?」


目を覚ませば、すぐ横にいる筈のない熒惑がいた。
驚きのあまり、後ろにこけて、熒惑を落としそうになったぐらいだ。
……オレが眠っている間に何があったんだ?


   □■□■


「……やっと大人しくなったか。」


風邪薬と熱冷まし、そしてかなり微量の睡眠薬を飲んだ(寧ろ無理やり飲まされた)熒惑はすぐに深い眠りに付いた。
熱冷ましが効き始めたのか、完全に寝入ったためか、先程まで、出ていた敷布を焦がす煙は徐々に小さくなり、そして消えた。


「着替えをもう少し持ってくるか。」


一度部屋を後にしようと立ち上がったら、何かに軽く引かれ、中途半端な体勢で動きを止めた。


「何だ…?」


ぎこちない動作で振り向くと、熒惑がオレの服の一部を掴んだまま眠っていた。
本当に眠っているのかと思うほど、その力は強く、少し引っ張ったくらいじゃ外れそうにもなかった。


「…………本当にコイツは…」


良く分からない奴だ。
傍にいて欲しいのか、早急にこの空間からいなくなって欲しいのかはっきりしろ。

そんな言葉とは裏腹にオレは微笑っていた。

嬉しいのか?
――ああ、きっとそうなんだろうな。

矛盾が多い熒惑の我侭に答えるべく、オレは寝台の端まで移動した。
ささやかな嫌がらせに、掴んでいる服をオレの手に摩り替えて。


目を覚ましたとき精々苦虫を噛み締めたような顔をしていれば良い、と。
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